LCCは地方にとって チャンスであり、ピンチ 
(連載「LCC革命の衝撃」第6回/観光庁長官・溝畑宏さんに聞く)

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   日本を訪れる外国人の数は年間679万人(2009年)と、全世界で33位という低水準だ。これを、2016年には2000万人、将来的には3000万人にまで引き上げようとしているのが、「観光立国」を目指す観光庁だ。

   観光立国は、政府の成長戦略に盛り込まれている項目のひとつでもある。相次ぐLCCの参入は追い風になるのか。観光庁長官・溝畑宏さんに聞いた。

――観光庁が出来たのは、2008年で、役所の中では、かなり新しい方です。まずは、観光庁は何をするのか、聞かせてください。

溝畑 私がよく言っているのは、「オールジャパンで日本を元気にしよう」ということです。これが「観光立国」の意味です。これまで「観光」という言葉は狭い意味で定義されていました。ですが、観光は全ての産業にとって突破口になり得ます。地域産業の活性化、雇用の創出にもつながります。成長戦略の柱だとも言えます。閣議決定にこれが盛り込まれたのは、極めて大きい意味があります。
   日本はこれまでは物作りの輸出で稼いできましたが、これからはサービス産業・ソフト産業にシフトしていかなければならない。中でも、最も突破口になり得るのが観光です。国民をあげて取り組むべき課題なのです。「観光立国」というミッションを08年にかかげ、10年は、今までになく「観光に全国民をあげて取り組む」という点を、皆さんに意識してもらうことができた年だと思います。

日本より人口の少ないシンガポールと韓国にも負ける

「将来的には、観光客数を3000万人まで引き上げたい」と話す溝畑宏・観光庁長官
「将来的には、観光客数を3000万人まで引き上げたい」と話す溝畑宏・観光庁長官

――09年時点での訪日外国人数は679万人です。この数字を、どのように受け止めていますか。

溝畑 アジアでは言えば、中国・韓国・タイ・マレーシアといった、成長著しい国に比べると、国際競争という観点からの日本の航空・観光政策は遅れていた。これは認めざるを得ません。その結果が、679万人という数字です。世界では33位。日本より人口の少ないシンガポールと韓国にも負けてしまっている。2000年頃にはタイと同じぐらいだったのに、タイは現在17位。大きく差を付けられてしまいました。現状はきわめて屈辱的です。

――具体的には、どのように変えたいと考えていますか。

溝畑 日本は観光についてポテンシャルを持っている。世界的に見ても、治安もいいし、清潔だし、「ルールや時間を守る」という国民気質があるように、規律がある国。北は北海道、南は沖縄まで、非常にバラエティーに富んだ美しい自然もある。観光資源は沢山あるのです。これを、ブランド化、再生化することを目指しています。
   具体的には、訪日外国人を将来、3000万人に増やすことを目指します。英国を訪れる観光者数が約3000万人です。陸続きであるフランス(1位)やスペイン(3位)に追いつく前に、島国である英国(5位)に追いつこう、ということです。

――訪日外国人を増やすと、日本にとって、どんな良いことがあるのでしょうか。

溝畑 日本の観光産業は、国内で、ある意味自立していました。しかし、人口減が始まり、少子高齢化も始まった。全体の観光マーケットもシュリンク(縮小)しています。そこに、国際競争が加わっている。LCCをはじめとする航空自由化政策にとって、この状況は追い風でもある一方、競争は激化しています。ネットの普及と、航空運賃の低廉化によって、日本人客にとって、国内旅行しかなかった選択肢に海外旅行が加わりました。
   つまり、地方の観光地でも、世界のマーケットで通用する競争力を持たないと生き残れません。グローバルに満足されるような観光地を作れば、国内産業の底上げにもなります。これから日本が世界に打って出るという時に、観光は非常に大きな突破口になるし、全ての産業が関連しているという点でも大きな効果が期待できるのです。

――では、訪日外国人を増やすためには、何が必要だと考えていますか。

溝畑 訪日外国人にとって魅力あるアイテムを開拓することです。日本であれば、自然の魅力がありますし、エコツーリズム、グリーンツーリズムが確立しつつあります。世界のマーケットを見据えると、医療観光、スポーツ観光、映画・アニメ・ファッションといった新しいコンテンツを日本全体で掘り起こしたいと考えています。ですから、吉本興業や、ファッションデザイナーなど、色々な業界の方に参画してもらって、日本の魅力をブランド化していくことが重要です。オールジャパンとはそういう意味です。国民をあげて取り組む、ということです。

――2010年には、羽田空港が本格的に国際化されるなど、航空業界でも大きな動きがありました。

溝畑 観光政策と、航空政策とで相乗効果を高めていかないと、観光立国への道は厳しい。国交省が2010年夏に策定した成長戦略でも、このことがうたわれています。そういう意味で、今回、羽田空港の国際化、成田空港の発着枠増加というのは、我々にとって非常に大きな追い風です。羽田・成田以外にも、国際空港、地方空港を含めて、国際的に競争するにあたっての舞台が整ってきたと実感できるのが2010年です。

――どのような手応えがありましたか。

溝畑 訪日外国人は、09年に679万人でしたが、10年は11月末時点で796万人。これだけの円高にもかかわらず、前年同期比約30%の伸び率です。とりわけ韓国・中国は50%前後の伸びを示しています。地方自治体の皆さんの地道な取り組みを含めて、一体となって進めたことが、効果として出始めていると思います。ただ、決して現状には満足していませんし、尖閣諸島の問題で中国・香港からの観光客が9月下旬を境に減少し始めました。そうしたリスクは常にあります。

口コミで外国人を呼び込む

――中国・韓国が伸びた要因は、何でしょうか。

溝畑 中国については、積極的なアピールを始めたこと、それと個人ビザを緩和したこと。「日本が、交流について積極的なシグナルを出している」というメッセージを送ることができたのではないでしょうか。国を挙げて取り組んでいることと、国だけではなく地方自治体や民間の人が、中国と交流したことが奏功しているのだと思います。実は、尖閣諸島の問題で、半減すると思っていたのですが、10月は前年同月比マイナス1.8%でした。変動を受けにくくなる程度に安定しているという印象を受けています。
   韓国も、09年は159万人にまで落ち込んだのですが、10年は約250万人のペースで推移しています。円高ウォン安でも日本にいらっしゃるのは、例えば福岡市と釜山市のように、自治体ごとの交流が、着実・計画的に進んでいる結果だと感じています。ただ、まだまだ「日本観光はコスト面で高い」という印象を持たれています。そういう中で、高速船ビートルの利用が伸びたり、LCCが参入したりするのは、需要創造につながっていくと考えています。一度行けば、必ずリピーターが出てきて、自分の予算を見ながら選択肢が広がります。そういうきっかけ作りというのは、LCCの役割として大きいと思います。

――LCCは、観光産業にどのようなインパクトを与えると考えていますか。グローバルな競争にさらされるという一面もあるように感じます。

溝畑 チャンスであるとともにピンチでもあるんです。今までは、観光産業は既得権益で守られていて、鎖国のような面もありました。ところが、一気に経済的に開国という状況になってきた。そこには競争も生まれるし、今までより地方がグローバルな視点を持っていかないといけません。地方がグローバルな視点を持って町づくり・経営をしていかないと、とてもじゃないけど3000万人は達成できません。大都市だけでは、絶対達成できません。観光立国に向けての10年のロードマップで大切なのは、地方の受け皿づくりの強化です。
   特にLCCというのは、地方にとってはチャンスです。コスト面で二の足を踏んでいた人が、これによって動き出す訳だし、羽田の国際化で、地方が海外とも繋がりやすくなるという面もあります。これをチャンスと感じて欲しいんです。攻める姿勢が大事です。
   東アジアに来る観光客の数は、推計で約2億人。これが10年後には約4億人になります。2億のうち、日本にたどり着くのが1000万人弱。これを、ふくらむ市場の中で2019年には2500万に持って行くことを目標に掲げていますので、LCCは地方都市にとってはチャンスになります。
   さらに、LCCでアウトバウンド(日本から海外への訪問)も増えると思います。旅先で交流を深め、逆に現地の人に日本に来てもらうことが大事です。このことが、間接効果としてインバウンドにも繋がります。

――LCCで海外に行きやすくなることによって、呼び込みにも繋がるということですね。

溝畑 「日本人っていいやっちゃなぁ。じゃぁ、一度行ってみようか」となってほしい、ということです。口コミですね。私も中国に行ったときに、現地で会った人に「何かあったら連絡してこい」と伝えていたのですが、それをきっかけに来日した人が、自分が長官に就任してからの10か月で100人ぐらいいます。「今度の休みに来い!」って言った、ほんまに来よって…。そういうもんですよ。現地に出向かなければ、この100人は来ない。やっぱり出ていかないといけない。ただ「来い来い」と言うよりは、出て行って仲良くなった方がいいと思いますね。

――LCCに対する支援策はありますか。

溝畑 既存のエアラインとLCCについて、特定の企業を応援することはありません。ただし、トータルで需要が高まるための支援、応援は、当然行わなければなりません。やっていかないと観光需要は伸びません。そこは表裏一体です。また、成田空港がLCCに対する参入促進策を打ち出したことは、利用者の立場になったきめ細かい航空市場が出来つつあると感じています、そういう意味では、有り難いと思います。

溝畑宏さん プロフィール

   みぞはた・ひろし 観光庁長官。1960年京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1985年旧自治省(現・総務省)入省。北海道庁、大分県庁に出向し、大分県庁時代にサッカークラブ「大分トリニータ」の創設に携わり、04年から09年まで同チームの運営母体「株式会社大分フットボールクラブ」代表取締役。10年1月から現職。

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