高橋洋一の民主党ウォッチ
新卒者に冷たい民主菅政権 守るのは労組員と官僚の雇用

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   大学にいると就職氷河期の話になることがしばしばだ。大学では、親密先の企業合同説明会を開いたり、模擬面接をしたり、精一杯の努力をしている。

   一方、大学で経済学を教えている立場からみれば、こうした努力には限界を感じざるを得ない。というのは、雇用は、個々の人や職場などのミクロ要因と経済全体での需要不足というマクロ要因が関係している。大学や学生、企業の努力はミクロ的なミスマッチの解消には役立つが、マクロ経済での需要不足はいかんともしがたいからだ。

日本郵便、2012年度の新卒採用中止

   現在マクロ経済でのGDPギャップ(需要不足)は20~30兆円あるとされているが、これだけあると、どうしてもある程度の失業は避けられない。それは、正規・非正規雇用者が雇用を失うだけでなく、新卒者が雇用されないことも意味する。むしろ、正規・非正規雇用者はすでに雇用されているという意味で既得権者であるが、新卒者はこうした既得権を持っていない。そのため、雇用問題の被害をもっとも先鋭的に受ける。

   厚生労働省によると、2011年春の卒業予定者の昨10年10月1日時点の就職内定率は、前年同期比4.9%減の57.6%と、調査が始まった1996年以来で過去最低となっている。

   政府は、大学卒業から3年以内の既卒者を採用した企業に1人当たり100万円の奨励金を出すことを決めた。もっとも、これは卒業者を助けることになっても採用枠が増えるわけではなく、新卒者にとって厳しくなる。100万円というカネがでるわけなので、効果はマイナスにはならないが、どの程度の効果になるのかあとで検証が必要だろう。

   一方で、政府の国家公務員の新規採用は4割もカットした。再国有化され、事実上政府の管理下になっている日本郵便(郵便事業会社)も、業績悪化を理由として、12年度の新卒採用を中止すると発表した。07年の民営化後は毎年1300~1600人程度と新卒を大量採用してきたが、初めての見送りになる。民営化以前にさかのぼっても、新卒採用の見送りは8年ぶりだ。

   しかし、ここでも新卒者は冷遇されているが、雇用されている既得権には優しい。国家公務員の給与改定では、人事院の調査ベースがおかしいことはこのコラム(「国税庁調査の数字使えば 公務員給与は5.5%減になる」10年12月9日)でも指摘しているが、菅総理も10年秋の代表戦では、人事院勧告を上回るカットをすると大見得をきった。ところが、労組などからの突き上げであっさりと断念してしまった。民主党支持母体の労組は、当然のこととして組合員つまり既得権者擁護のための組織なのだ。

   日本郵便でも、非正規雇用を正規雇用にし、非正規といいながらも雇用を得ている既得権者にはやさしいが、新卒者という既得権のない人には厳しい。

「自民党時代にもなかった」ひどい天下り

   やや余談だが、民主党政権は、天下り根絶といっておきながら反故にした。実は、これも雇用を得ている既得権者を優遇するものだ。このほど、前・資源エネルギー庁長官が退官から4か月余で東電顧問へ天下りした。今回の経産省の天下りは、かつての自民党政権でもなかったほどの、悪のりした天下りだ。というのは、直前まで直接所管していた企業に、所管庁のトップがいきなり天下りしたからだ。

   日本郵便に見られるように、雇用、雇用といいながら、結局、菅政権が守っているのは労組組合員、官僚などの雇用の既得権者ばかりで、新卒者という既得権を持っていない人には厳しい。

   その一方で、マクロ経済での需要不足への対処という点で落第点だ。菅総理は09年の秋に経済財政担当大臣としてデフレ宣言を行った。そこまでは良かったが、その後、財務大臣、総理と出世階段を上ってきたが、デフレ対策ではまったく無策だ。

   マクロ経済として、デフレと失業は需要不足のために生じる現象なので、根は同じだ。対処法としては、マクロのGDPギャップを、財政政策と金融政策で埋めるしかない。経済学の基本であるが、変動相場制の下では、財政政策の効果は金融政策より劣る(マンデル=フレミング効果)ために、セオリーはまず金融政策であるが、非常事態ならば、財政政策も併用するしかない。

   政府がすべきことは、ミクロに介入するよりも、マクロできちんとした経済政策を実施することだ。ところが、菅政権では経済財政諮問会議のようなマクロ経済の司令塔がなく、日銀との対話もうまくできずに、マクロ経済政策は不在だ。海外では、米国をはじめとして強烈な金融緩和を行い、景気回復しているのと好対照だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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