英高速鉄道の車両更新事業 日立製作所が受注できた理由

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   英国運輸省は2011年3月1日、ロンドンとマンチェスターなどの主要都市を結ぶ高速鉄道の車両を更新する事業について、日立製作所を中心とするグループとの契約に向けて最終交渉に入ると発表した。

   日立側の受注が事実上決定したが、当初1兆円とされた事業規模は総額45億ポンド(約6000億円)に4割縮小された。日立としてはライバルに持って行かれるなどの危機は乗り越えたが、成長の柱としたい海外事業の困難さが改めて示された。

ロンドンと海峡トンネル結ぶ高速鉄道の実績を評価

   日立が英国から事業の優先交渉権を得たのは2009年2月。しかし、10年5月に発足した保守党・自由党連立政権は、財政再建を進めるためにあらゆる事業を見直すと表明し、日立が優先交渉権を得た高速鉄道事業も対象となった。

   この結果、優先交渉権もどこまで有効かが不透明な情勢となった。これを受けて「入札の仕切り直し」と見た世界の鉄道大手も巻き返しを図り、日立側の受注に向けた環境は暗転したかに見えた。

   最終的に日立側の受注にいたったのは、2009年開業のロンドンと英仏海峡トンネルを結ぶ、別の高速鉄道の車両納入実績が評価されたからのようだ。

   ダイヤが乱れやすい英国鉄道にあってほとんど遅れなく運行できていることや、車両納入自体も期限前に済ませた点など、日本国内なら当然と思われる点も高評価の対象になったとされる。また、日立が当初の車両様式より低価格のものを提案し、新たに建設する車両工場の雇用を増やすこと示したことも功を奏した。

   老朽化した車両を置き換える事業自体は「鉄道運行を続ける以上は必要」(日立幹部)と見られていたため、「白紙撤回はない」(同)としてねばり強く水面下で交渉した。ただ、事業規模は大幅に縮小された。当初は最大1400両を納入し、事業規模は75億ポンド(約1兆円)とされていた。今回英国運輸省から公表された計画では、車両の納入が500両に削減されることになった。日立の中西宏明社長は「厳しい歳出見直しにもかかわらず、プロジェクト継続を決定した英国政府の決断に敬意を表する」とのコメントを発表した。

世界の鉄道事業は「ビッグ3」の寡占状態

   とはいえ、海外での鉄道事業拡大を成長の柱とする日立としては、今後の展開に向けた布石にはなる。世界の鉄道事業はカナダのボンバルディア、ドイツのシーメンス、フランスのアルストムの「ビッグ3」の寡占状態にある。鉄道発祥の地である英国の大型案件で、ビッグ3を押しのけて受注を獲得した実績は「次」に向けて大きなアピール材料になり得る。日立は英北部ダラム州に車両生産工場を建設し、欧州市場の開拓に注力する構えだ。

   ちなみに、今回の日立の受注は、最近流行の官民一体による原発や新幹線などの「インフラ輸出」とはやや毛色が異なる。新幹線はJRグループと日本政府、車両メーカーがまさに一体となって線路の敷設から運行管理までを全体として輸出するもので、原発も同様にシステム全体の輸出だが、今回の日立は英国ゼネコンと組んでの受注で、請け負うのは車両更新と保守サービスにとどまり、日本政府もさほど力を入れた形跡はない。日立の受注が官民一体の「インフラ輸出」に弾みをつける、という論調が一部メディアで見られるが、やや的外れといえそうだ。

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