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「浜岡原発停止」で中電の支援中止 九州電力7月に供給不足の可能性

   中部電力の浜岡原子力発電所の運転が停止されることになり、思わぬ方向に影響が出そうだ。福島第1原子力発電所の事故で電力不足が懸念されている東京電力が中電から電力の融通を受けていることは広く知られているが、実は中電は九州電力にも電力を融通している模様だ。

   九電は、定期検査で停止している玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の運転再開が東日本大震災の影響で延期されており、供給不足になる可能性が指摘されている。中電からの支援が途絶えることは確実で、事態はさらに深刻化しそうだ。

九電の原発の半分が止まってしまう状況

   九電は玄海原発(佐賀県東松浦郡、1~4号機)と川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市、1~2号機)の2か所、計6基の原発を保有しており、九電で発電されている電力の約4割を原発が占める。そのうち、玄海原発2、3号機は定期検査で停止しており、3~4月の運転再開予定だったが、震災の影響で再開が延期されている。さらに、川内原発1号機も5月10日から約2か月間の定期検査に入る。九電の原発の半分が止まってしまう形だ。

   九電が3月30日に発表した11年度の電力供給計画によると、夏の電力需要は1669万キロワットが見込まれている。しかし、原発3基が使えない状態での供給力は1728万キロワット。供給力の余力を示す「予備率」は3.5%にまで低下する見通しだ。予備率は8%~10%程度が適切だとされており、夏は綱渡り状態だ。

   さらに、原発の分を火力で補うにしても、石油などの燃料を大量に確保する必要がある。九電の3月の会見の時点では、確保できている火力発電用の燃料は6月中旬の分までで、危機的状況が続いていた。中電は3~4月の時点では、比較的供給力に余裕があったことから、震災直後から東京電力に電力を融通しているほか、九電に対しても5月から40万キロワット程度融通を始めた。

玄海原発の運転再開を目指す

   九電が4月以降に新たに確保できることになった石油や液化天然ガス(LNG)をあわせると、九電管内では、6月~7月上旬までは計画停電は避けられる見通しになっていた。だが、政府が浜岡原発の停止を求めたことを受け、真部利応社長は5月9日、引き続き中電からの融通を受けることは困難になるとの見通しを示した。

   そこでカギになるのが玄海原発の運転再開だ。同日、真部社長は玄海県発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長を訪れ、運転再開への理解を求めている。今後、佐賀県の古川康知事とも面会して安全対策について説明する予定だ。ただし、古川知事は5月6日に発表したコメントで、浜岡原発の停止要請について、「驚いている」としながらも、玄海原発の安全性については、

「どのような判断をされているのか現時点ではわかりません。緊急に政府に説明を求めていきたいと思います」

と、九電ではなく政府に対して説明を求めている。今後の政府と地元自治体のやりとりには紆余曲折も予想され、6月~7月上旬までに運転再開できるかは不透明だ。