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宿直1人、鍵の壊れた窓… 6億円保管警備会社の「お粗末」

   「国内最高額」約6億円強盗の被害にあったのは、警備のプロのはずの警備会社の営業所だった。犯人の2人組は半年前から鍵が壊れたままの窓から侵入したとされるなど、「お粗末」と指摘されても仕方ない警備状況が浮かび上がっている。

   1965年創業の老舗警備会社「日月警備保障」(東京都千代田区、従業員約800人)の立川営業所(東京・立川市)に強盗が入ったのは2011年5月12日未明の3時ごろだ。4階建マンション1階の営業所には当時、男性警備員(36)1人だけがおり仮眠中だった。

危機管理専門家「暗唱番号管理にも問題」

   犯人らは、警備員に腕骨折など2か月のけがを負わせた上で金庫の暗証番号を聞き出し、麻袋などに分けて入れられていた現金約6億400万円を運び出し、車で持ち去った。警備員が縛られた粘着テープを自力でほどいて警察に通報。犯行時間はわずか10~20分とみられている。

   「6億円もあるのに警備員1人、鍵の壊れた窓を放置、金庫暗唱番号の管理、どれを取っても会社の対応に問題がある」。危機管理が専門の「VIA」(東京都港区)の会社代表はこう断じた。さらに「全体的に不自然だ」とも指摘。犯行時に大金があることや当直員が暗唱番号を知っていることなどを犯人が把握していたことは「出来すぎ」で、内部事情に詳しい人間の関与が疑われるとの見方を示した。

   犯人らは、鍵がかかっていた出入り口わきにある腰高窓(縦40センチ、横50センチ)から侵入したとみられている。窓の鍵は10年秋ごろから故障していた、という。

   「営業所内の防犯カメラには犯人の姿が映っていたが、暗くて顔は不鮮明」との報道もある。ちなみに、「営業所は夜間、異常を感知する警備システムを作動させていないことが分かった」との複数の報道もあったが、通常の事務所警備システムは室内が無人になるときに使用するものだ。中に人がいれば「異常」を感知してしまうため、当直員がいれば「作動させず」は当然だ。日月警備保障の関係者もそう説明した。

日月警備保障「現在、警察に全面協力」

   それにしても、警備会社が車で現金護送するのはよく知られた姿だが、6億円もの現金を営業所などで一時保管するのは一般的なのか。全国警備協会(東京)によると、現金輸送・護送の分野は機密性が高く、警備会社と顧客側が個別に条件(警備員数など)を交渉しており「対応は各ケースでバラバラ。実態はよく分からない」という。

   今回被害にあった約6億円の大半は、東京中央郵便局から5月11日(犯行は12日未明)に同営業所へ運び入れられ、多摩地区の各郵便局の貯金引き出し用などに12日に護送されるはずだった。週末対応などのため火・木曜の現金護送額は普段より多めになるとの情報もある。5月12日は木曜だ。

   日本郵政グループの郵便局会社の担当者は「警備を専門とする会社を信頼して任せていた。事件は想定外」とコメントした。日月警備保障は、以前から同様の現金護送業務を受け持っているという。現金護送の仕事は「全国的にはいろいろな会社と契約している」としている。

   日月警備保障は、「警備がずさんだったのでは」との指摘についてどう受け止めるのか。担当者は、「ご迷惑をおかけしていることを心からお詫び申し上げます」とした上で、「現在、警察に全面協力という対応をしております」とするコメントを公表するにとどめた。窓の鍵の故障放置などについては「事実関係を確認中」としている。

   日月警備保障では、とめていた現金輸送車から現金がなくなる事件が03年(1億5000万円)と08年(6900万円)に起きている。いずれも「郵政」関係の現金で、2件とも未解決だ。