2024年 4月 20日 (土)

稚魚不漁でウナギの値段上昇 「中国産」まで高騰の異常事態

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   全国のウナギ料理店が、ウナギの仕入れ価格の上昇に頭を悩ませている。養殖に欠かせない稚魚のシラスウナギの不漁が原因だ。

   ウナギは卵から育てることが難しく、天然のシラスウナギに頼るしかない。近年、研究レベルで「完全養殖」が成功したが、実用化まではまだ時間がかかると見られる。

2年連続で不漁は過去に例がない

ウナギは値上げも覚悟?
ウナギは値上げも覚悟?

   農林水産省の「漁業・養殖業生産統計」によると、2010年のウナギの国内養殖生産量は2万533トン、輸入量は5万3072トンとなる。輸入先は中国と台湾が占める。

   養殖では、国内の河川で稚魚のシラスウナギを捕獲し、養殖施設で育てて成魚にする。このシラスウナギが、2年連続で不漁となった。日本養鰻漁業協同組合連合会(日鰻連)に聞くと、養殖のために飼育池に放つ「池入れ」できた量は、10、11年ともに20トンにとどまった。最低ラインギリギリの量で、日鰻連では「十分とはいえない」とため息をつく。漁の期間は前年12月~4月までと定められているため、今年は既に終了したことになる。

   日鰻連によるとウナギは、日本の南、北西太平洋のマリアナ諸島近海で産卵するという。ふ化した幼魚は海流に乗って西のフィリピン方面まで泳ぎ、今度は黒潮の流れで北上、日本や台湾、中国までたどりつく。ところが2010年は、エル・ニーニョ現象で海水温に変化が起きたため、「ウナギはマリアナ諸島よりも南で産卵し、フィリピンに向かう海流とは別の海流に乗ったのでは、と考えられます」と日鰻連では説明する。そのため黒潮に届いたシラスウナギが少なく、日本に着いた分も減ったというのだ。一方、2011年の不漁については原因が分かっていない。「2年続けて少なかった、というのは過去に例がありません」(日鰻連)。

   こうなると頼みの綱は「輸入もの」なのだが、これも価格が上昇している。理由はやはり稚魚不足で、輸入先の中国と台湾の状況は、日本より悪い。中台ともに2年前は20トンを超えていたシラスウナギの量が、2011年は中国で8トン、台湾にいたっては0.7トンと激減していると、日鰻連は明かした。

不漁になれば輸入ものも価格が上昇

   現在のウナギの養殖は、卵からふ化させるわけではなく、天然のシラスウナギを捕獲してから育てる。日本に限らず中国や台湾でも、シラスウナギなしでは養殖が不可能なので、いったん不漁になれば輸入もののウナギも価格が上昇する。

   水産総合研究センター増養殖研究所によると、ウナギの生態はまだ不明な点が少なくないという。単純に飼育していても卵は生まず、人工的に卵からふ化させることに成功してもエサが分からないため育てられない。人工ふ化は1973年に北海道大学で成功したが、生まれた「仔魚」(シラスウナギに育つ前の幼生の段階)を育てる方法が長年解明できなかったという。

   2010年4月、同研究所ではウナギの「完全養殖」に成功したと発表。人工ふ化させて生まれた仔魚をシラスウナギ、さらに成魚にまで育て、そこから卵を生ませて次の世代の「人工ウナギ」をつくりだしたのだ。

   この仕組みが実用化されれば、年によって変動する天然シラスウナギの「漁獲量」に振り回されることなく、安定した養殖が可能となる。だが同研究所によると「現段階では、完全養殖できるのは数百匹程度。実際に各地の養殖場で飼育して、ウナギが市場に出るようにするためには億単位の数が必要でしょう」と話す。家庭の食卓に上るほど「大量生産」して採算の合う事業にする段階は、まだ見えていない。

   夏を前にして、大手外食や牛丼チェーンでは「うな丼」「うなぎ定食」といったメニューが出始めたが、値上げを余儀なくされたところもある。しばらくはシラスウナギの毎年の捕獲量に一喜一憂するしかなさそうだ。

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