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取引所外での株売買が台頭 東証と大証の統合促す?

   証券取引所外で株を売買する「私設取引システム」(PTS)の国内での普及が一段と進んでいる。国内でPTSを運営する証券7社についてカブドットコム証券が集計したところ、2010年度の売買代金は前年度比7割増の4兆3000億円。

   今年度も、5月が前年同月比5倍の8400億円と、過去最高だった今年3月(9300億円)に次ぐ2番目の規模に膨らみ、好調を維持。国内の株取引全体に占める割合は1~2%にとどまるとはいえ、存在感を増している。

2010年夏ごろから利用広がり始める

   すで に普及が進んだ欧米では、PTSが取引所の再編を促しているが、日本でも「東京、 大阪両証券取引所の統合協議に影響する」との見方もある。

   PTSは証券取引所を経由せず、証券会社の運営する電子システム上で、売買注文を成立させるもの。国内では、日本証券業協会が認可している7社が運営している。1998年の改正証券取引法(現金融商品取引法)で解禁されたが、認知度不足などから、ほとんど普及してこなかった。

   国内でPTSの利用が広がり始めたのは、2010年夏ごろ。7月に東証の子会社である「日本証券クリアリング機構」が売買決済を保証するようになり、取引に対する投資家の信用度が増し、海外の機関投資家を中心に利用が増えた。

   投資家にとってのメリットの一つは、売買手数料の安さ。料金は運営会社によってまちまちだが、SB証券やカブドットコム証券では従来の4分の1以下になるケースもある。また、株価の変動幅も「0.1円」が可能になるなど柔軟なほか、夜間取引もできて利便性が高い。

将来の成長に欠かせないのはデリバティブ取引

   すでに欧米では、個別株の売買の4~5割程度がPTSによるものとされている。こうしたなか、PTS大手の米BATS・グローバル・マーケッツが2011年2月、欧州のチャイエックス・ヨーロッパを買収する契約を結んだと発表。欧州では、両社を合わせた売買代金シェア はロンドン証券取引所を抜いて首位に立つ。

   PTS勢力の台頭もあって、欧米では既存取引所の再編機運が高まっている。ロンドン証取グループが、カナダの証券取引所を運営するTMXグループと11年2月に経営統合に合意したほか、ニューヨーク証券取引所(NYSE)などを運営するNYSEユーロネクストも同月、ドイツ取引所との合併で合意。

   両案件とも「PTSの成長で伝統的な取引所の地位が脅かされたことが引き金の一つ」(国内証券大手)と見られている。PTSに押されて収益性が落ちると見込まれる現物株取引から、デリバティブ(金融派生商品)取引にシフトしようという狙いも背景にある。

   東証と大証の統合協議もPTSの台頭と無縁ではなさそうだ。国内現物株取引の9割以上を握る東証にとっても、デリバティブに強みを持つ大証を取り込むことは、将来の成長に欠かせないからだ。た だ、両取引所の統合協議は今や主導権争いの場と化しており、行方が混沌としているのが実情だ。