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3DS「大幅値下げ」でも伸び悩み 1か月でもとの販売水準に戻る

   携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」が、大幅値下げしたにもかかわらず、1か月もたたないうちに売れ行きが頭打ちになってきた。

   そもそもこの値下げ、発売から半年という異例の時期に行われた。販売拡大を狙っての「カンフル剤」の効果が限定的では、通期の販売目標に掲げる1600万台の達成は難しい。

値下げ直後は19万台も4週目には5万台

魅力的なゲームソフト少ないとの指摘も
魅力的なゲームソフト少ないとの指摘も

   任天堂が「3DS」の値下げに踏み切ったのは、2011年8月11日。発売した2月当時の価格は2万5000円だったが、改定後は1万5000円と1万円も値引きしたのだ。任天堂自ら「過去の歴史にはありませんでした」と認めるほどの大規模な減額となった。

   値下げの理由について岩田聡社長は、7月29日の決算説明会の席で「3DSの魅力が伝わるのに、私たちの事前の想定よりも時間がかかっている」と発言した。3DSの普及が予想よりも遅いとの考えを示したようだ。そこで、年末商戦でソフトを投入する前に、ハードである3DSを普及させておくために1万円もの値下げにゴーサインを出したという。

   エンターブレインが8月16日に発表した3DSの国内販売台数データを見ると、2月の発売時の37万1326台をピークに、5週目あたりから値下げした8月11日の週まで、毎週5万台程度で落ち着いたままだった。

   ゲーム産業のシンクタンク、メディアクリエイトによると、値下げを実施した8月11日の週、3DSの販売台数は19万6077台と一気に伸びた。だが翌週は10万5639台、翌々週には6万781台と数字が落ち、直近となる8月29日~9月4日では5万4744台まで下げ、値下げ前の水準に戻ってしまった。

   値下げ効果は、1か月足らずでしぼんでしまったのか。メディアクリエイトの細川敦氏は、「9月に発売予定のソフトのラインアップは、今ひとつ強力なタイトルが見当たりません」と指摘する。売れ行きが「V字回復」する見込みはなさそうだ。だが一方で、「値下げの効果は、短期的に一気に出るというよりは、長期的にじわじわと実を結ぶと見ています」と予測する。むしろこれから本格的な効き目が出てくるというのだ。

「少なくともお正月まで見ないと、何とも言えません」

   そもそも3DSを大幅に値下げせざるを得ないほど人気が爆発しなかったのはなぜか。細川氏は、「3DSという新しいハードを買ってまで遊びたい魅力的なソフトが少なかった」点を挙げる。

   加えて最初の2万5000円という価格設定は、値ごろ感が求められる携帯型ゲーム機としては「敷居が高かった」(細川氏)ことも「悪条件」となったようだ。成功を収めた「ニンテンドーDS」の後継機として話題を集めたうえ、薄型テレビを中心とする「3Dブーム」が起きたことも重なって、3DSへの期待値は大変高まったが、「ソフト不足」と「高価格」が足を引っ張る形となってしまった。

   発売から半年での値下げ発表は、細川氏も唐突に感じたようだが、1万5000円に下げたことで「適正な価格」に落ち着いたと見る。任天堂は9月13日に新製品発表会を予定しているが、年末商戦向けの有力ソフトが発表される可能性もある。「年末商戦前に、値ごろ感を出した3DSをできるだけ普及させておきたいという考えは極めて理にかなっています」と細川氏。あとはどれだけ訴求力のあるソフトを提供できるかで、3DSの値下げ効果の出方が違ってくるかもしれない。

   任天堂は、3DSの年度内の販売台数目標を1600万台としている。6月30日時点での国内・海外の累計は432万台。値下げ効果が表れてこないと、目標達成は難しい。任天堂広報に聞くと、「値下げから1か月足らずで判断するのは時期尚早です。少なくともお正月まで見ないと、何とも言えません」と話す一方、「ニンテンドーDSも発売当初は『ヒットするのか』と言われましたが、おかげさまで人気商品となりました」と、3DSの販売の伸びに自信をのぞかせる。