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「蒲蒲線」実現に向け地元と協議 駅間800mの「不便」解消

   東京急行電鉄は、東急「蒲田駅」と京浜急行電鉄の「京急蒲田駅」を結ぶ新路線「蒲蒲(かまかま)線」(新空港線)を敷設するため、地元との協議に入った。

   「蒲蒲線」構想はすでに国の運輸政策審議会から「2015年までに整備着工することが適当」との答申を受けていて、東急電鉄と京急電鉄、国、東京都、大田区に鉄道建設・運輸施設整備支援機構の6者が「勉強会」で検討を進めていた。

羽田空港へのアクセス便利に

   「蒲蒲線」について東急電鉄は「地元に、まだ(敷設を)打診したところで、協議を始める段階です」と話す。地元・大田区も「すべての関係者の合意を得ていきたい」としている。

   蒲田駅にはJR京浜東北線と、東急池上線と多摩川線が乗り入れており、両者の乗り継ぎは容易。しかし、JR線・東急線の蒲田駅と京急蒲田駅は約800メートル離れており、利用者からは「乗り換えに不便」などの声があがっていた。

   京急蒲田駅は、羽田空港と結んでいる。東急としては京急に乗り入れて羽田空港に接続することで、空港への利便性を高める狙いがある。

   東急線の利用客、なかでも田園調布(大田区)や二子玉川(世田谷区)周辺、東横線沿線に住む人は、羽田空港に向かうのに品川駅を経由しなくて済むようになる。

   構想では、東急多摩川線の蒲田駅ホームを地下化して設置。一方、京急空港線を大鳥居駅から京急蒲田駅まで新たにレールを地下に敷き蒲田駅まで延伸、蒲田駅地下ホームに乗り入れる。乗客は蒲田駅地下ホームで、対面式で乗り換えられるようにする。

   大田区は、「東急線と京急線は車輪の幅が違います。車輪の幅を変えられるフリーゲージ・トレインなど新型車両の導入は検討課題ではありますが、現段階では乗り換え方式が、より現実的と考えています」と説明する。

   フリーゲージ・トレインは現在建設中の九州新幹線長崎ルートで実用化を目指しているが、走行面での安全性を指摘する向きがある。また、わずか800メートルといえども用地の確保も必要で、地元への影響を含め、クリアする課題は少なくない。

「広域ネットワークへ」地元・大田区の期待大きく

   とはいえ、「蒲蒲線」が実現に向けて動き出したことを、一番喜んでいるのは大田区だろう。ここ数年、大田区は「蒲田問題」に頭を痛めてきたからだ。

   箱根駅伝でおなじみの京浜急行の蒲田踏切は、ふだんは第一京浜(国道15号線)の渋滞を引き起こしていた。現在その渋滞解消のため、京急線は高架化を進められている(2012年度中に完了)が、この事業に約200億円の分担金を拠出した地元の大田区は、高架化によって一部の電車(エアポート特快)が京急蒲田駅を通過するようになったことから、「これでは地元の活性化にならない」と不満が漏れていた。

   東急線は一方で、2012年度には東横線と東京メトロ・副都心線との相互乗り入れを予定していて、大田区は「直通運転が始まれば、東武線や西武線を利用する埼玉県の住民などが副都心線~東横線~多摩川線で蒲田や羽田とつながり、便利になります。地元の活性化もありますが、広域ネットワークの点からも期待できます」と、強調する。