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「米国の新聞経営はまだ回復していない」 在米ジャーナリスト石川幸憲氏の最新分析

   在米ジャーナリストで、米国のメディア事情に詳しい石川幸憲氏は2011年12月1日、東京の日本記者クラブで講演し、一時は経営が持ち直したと伝えられた米国の新聞経営は、最新の調査で広告売上げが前年比マイナス成長となっており、依然、回復基調とはいえないと話した。

   石川氏は9月に毎日新聞社から「ワシントンポストはなぜ危機を乗り越えたか」を出版したが、その取材を通して日本の新聞業界に参考になる多くの視点を得たという。

広告売上げはNYタイムズ10%、ワシントンポストが20%減

石川幸憲氏(2010年撮影)
石川幸憲氏(2010年撮影)

   石川氏によれば、最近四半期の広告売上げはニューヨークタイムズが10%、ワシントンポストが20%前年比で落ちている。この結果を見る限り、米国の新聞広告売り上げ減は底を打ったといえない。

   9月には調査会社のリポートで、新聞がなくても社会ニュースは手に入れることが出来るという人が69%、40歳以上では44%の人がニュースを知る媒体は新聞としているが、18歳から39歳では23%しかいないことが分かったという。

   米国の新聞業界は生き残りのために、経営の方向がいくつかに分かれ始めた。

   新聞にしがみついて、紙で生き残ろうという米国最大の新聞チェーン「ガネット」。一方で新しいビジネスモデルに挑戦している新聞社も多い。ニューヨークタイムズは紙、パソコン、テレビ、スマートフォンなどあらゆるメディアにニュースを流す態勢をとるためコンテンツの再構築を図っている。

100%読者の寄付で運営するNPO型ニュースサイトも

   オンラインファースト、紙はもうだめで、まずWebから、と方向転換したメディアニュース・グループは、記事の3分の1は系列各紙オリジナル、3分の1は配信57紙で共通、残り3分の1は読者のコメントなどで編集という経営方針を立てた。100%読者の寄付で運営するNPO型ニュースサイトもある。

   業界全体では、広告回復は難しいと見て、人員削減を重ねているという。