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東証、大証が経営統合で合意 今後の焦点は「総合取引所」の開設

   東京証券取引所と大阪証券取引所は2011年11月22日、経営統合することで合意したと発表した。2013年1月1日に共同持ち株会社「日本取引所グループ」を設立し、事業会社の東証、大証が傘下に入る。傘下子会社は1年程度をかけて「現物株」「デリバティブ(金融派生商品)」、上場企業を管理する「自主規制法人」、取引の決済を担当する「精算機関」 の計4子会社に再編する。

   ともに明治初期の1878年に設立された長い歴史をもつ取引所。最近でも「日経225」といった株式指数先物商品の争奪戦などを展開し、ライバル関係にあっただけに「水と油」とも評されるが、国内市 場の地盤沈下などの環境変化が後押しし、金融庁も背中を押した。

大証取引高は韓国などの後塵を拝して世界15位

「日本の資本市場の国際競争力強化に直結する」

   統合発表会見で東証の斉藤惇社長はこう述べた。しかしこれは競争力弱体化への危機感の裏返しでもあった。

   東証の上場企業の時価総額は1991年末、ニューヨーク証券取引所を上回り、世界1を誇った。「兜町が世界の中心と思っていた」と振り返る証券マンもいるほどの活況だった。しかし、バブル崩壊後の長い景気低迷もあって徐々に後退し、今年10月 末時点では3兆4280億ドルで4位。NYSEユーロネクストの米国部門(ニューヨーク証 取、11兆8836億ドル)の3分の1以下にとどまり、大証(2162億ドル)と合わせてやっとロンドン証取(3兆4300億ドル)を抜いて3位に浮上する状態だ。

   株式の売買代金も低迷。2010年はピークの2007年(752兆円)の半分以下の359兆円に落ち込み、2年連続で上海を下回り世界4位。 最近では欧州債務不安に伴う投資家のリスク回避志向もあり、東証1部 で1日1兆円を割る薄商いが続く。デリバティブを得意とする大証も取引高は韓国などの後塵を拝して世界15位に過ぎず、世界の投資家を引きつけ、規模拡大を図ることが急務 だった。

システム負担の軽減から年間70億円のコスト削減

   東証のローカル化も著しく、上場外国企業数は11月17日に上場廃止を申請したスペインの電話事業大手テレフォニカを除くと11社 にとどまる。127社 を数えたピークの1991年から10分 の1以下に落ち込む。今年10月末時点でともに500社を超えるニューヨーク証取、ロンドン証取や、300社を超えるシンガポール取引所にも大きく遅れをとっているのが実情 だ。

   東証、大証の統合により、システム負担の軽減から年間70億円のコスト削減効果が得られるという。証券関係者の間には「ここで生まれた余裕を海外企業の上場誘致や海外への システム売り込みにつぎ込むべし」との見方がある。

   最終的に背中を押したのは金融庁。両者がメンツ争いにこだわり破談も視野に入る状況にいらだちを強め、「来年10月 の統合でまとめられないか」などと働きかけたという。

   今後の焦点の一つはさらに取引所を統合し「総合取引所」を設けること。筆頭候補は金や原油などの商品先物取引を扱う東京工業品取引所。東証大証が「日本取引所グループ」から「証券」の名を外したのも東工取合流への布石だが、監督官庁が異なるだけに調整の難航も予想される。