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「カンボジア人エースランナーの水準に達していない」 現地英字紙、猫ひろしを酷評

   カンボジア国籍で2012年夏のロンドン五輪の出場を目指す猫ひろしさん(34)は、2012年2月5日に行われた別府大分国際マラソンで、自己ベストを7分以上も更新する2時間30分26秒の新記録を出した。

   だが、カンボジアにはヘム・ブンティン選手(26)という有力選手がおり、猫さんが11年秋に「カンボジア代表」として出場していた代表選考レースでは、ブンティン選手は出場していなかった。今後、ブンティン選手が代表レースに復帰することがあれば、猫さんの立場が苦しくなるのは必至だ。

エースが「規律違反」理由に代表外される

   実は猫さんは、カンボジア国籍を取得した2011年11月の時点で、現地メディアからは厳しい声が上がっていた。例えば、11年11月10日付けの現地英字紙「プノンペン・ポスト」では、11年6月に出場したプノンペンハーフマラソンの成績がやり玉に挙げられている。猫さんの成績は1時間16分54秒で、総合2位だったが、同紙では、

「猫選手はブンティン選手に5分以上遅れて2位でゴールイン。この事実は、猫選手が、このカンボジア人ランナーと同じレベルに達していないかもしれないことを裏付けている」

と酷評した。なお、ブンティン選手は08年の北京五輪のカンボジア代表で、過去2回の東南アジア大会で銀1個、銅2個のメダルを獲得している。いわば、「カンボジアのエース」という訳だ。

   猫さんは、11年11月にジャカルタで開かれた東南アジア大会にカンボジア代表として出場、自己ベストを更新している。だが、この大会の直前に、クメールアマチュア陸上競技連盟は、「規律違反があった」としてブンティン選手をカンボジア代表から外していた。その結果、この大会では、猫さんが男子マラソンでは唯一のカンボジア代表となったのだが、記録は2時間37分39秒。カンボジア五輪委員会がブンティン選手のタイム「2時間31分58秒」を基準に設定した「2時間31分前後」というハードルを突破することができなかった(別府大分マラソン後には「2時間25分前後」と、さらにハードルが上がっている)。

「彼が選ばれたことに関する異論は、カーペットの下に覆い隠された」

   実は、猫さんが東南アジア大会への出場を決めた時点で、前出のプノンペン・ポストは、

「協会は、タキザキ(編注: 猫選手の本名)が、悲願である陸上競技でのメダル増加を実現できる能力を持っていると堅く信じており、彼が選ばれたことに関する異論は、カーペットの下に覆い隠された」

と強く批判している。これが現実のものとなってしまった形だ。

   なお、五輪の陸上競技に出場するためには「標準記録」を突破する必要がある(カンボジアの男子マラソンの場合、2時間18分)。だが、どの種目でも標準記録を突破することができなかった場合、男女1人ずつ、いずれかの種目に「特例枠」で出場できることになっている。猫選手が狙っているのは、この「特例枠」だ。

   もちろん、ブンティン選手も手をこまぬいている訳ではない。12年1月9日付けのプノンペン・ポストによると、日本企業の支援を受けて3月末まで83日間にわたってケニアで高地トレーニングにわたって行うといい、自己ベストの更新に意欲を燃やしている。また、

「(政府側と選手側の)双方が(和解に向けた)解決策を模索したいとしている」

と、選考レースへの復帰も近い様子。猫選手の前に立ちはだかった壁は、相当高いといえそうだ。