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維新の会提言した「掛け捨て年金」 いったいどんな制度なのか

   橋下徹・大阪市長が代表を務める大阪維新の会が「年金保険料の掛け捨て」を提言したことが波紋を呼んでいる。

   たしかに老後の生活資金の一助にするつもりで納めている年金の保険料を、「掛け捨て」といわれると損した気持ちになる。いったいどんな制度なのか。

多くの資産を持っていると、年金はもらえない

橋下徹・大阪市長は「掛け捨て年金」について、ツイートを連発している
橋下徹・大阪市長は「掛け捨て年金」について、ツイートを連発している

   そもそも、年金制度はわかりづらい。しかし、いま納めている年金保険料が、将来年金を受け取るときに満足に支払われない可能性が高いということは、なんとなくわかっている。

   一方、「掛け捨て」の損害保険があるように、保険料を納めても、保険の対象期間に事故などがなければ保険金が支払われない、つまり掛け金が戻らない仕組みが「掛け捨て」だ。

   「掛け捨て」の言葉に、インターネットでも「現役のときに(保険料を)払い続けたのに、65歳を迎えて年金がもらえないのは不平等」との声や、「もらえないのがわかっているのに誰が払うの?」といった意見が目につく。

   橋下市長はそんな「掛け捨て年金」への「誤解」を解くためか、ツイートを連発している。

   そこでは、厚生労働省担当のTBS記者が「今の年金も掛け捨てですよ。年金支給日までに死亡すれば年金はもらえない。そういう意味では掛け捨てです」と言ったことに対して、「『掛け捨て』という言葉遊びをしている」と、理解不足を指摘した。

   たしかに、現行の年金制度では年金支給日に死亡していれば、年金は受け取れない。記者はそれを「掛け捨て」といっているのだが、維新版「船中八策」の掛け捨て年金は、「資産を持っている人には支給しない」という意味であるという。

   年金の「掛け捨て」とはどのようなことなのか――。現在の国民年金保険の場合、20歳以上の人(学生特例制度などを除く)が月額1万5020円(2011年度)の年金保険料を国に納めることになる。

   橋下市長らが提言した維新版「船中八策」の新年金制度も、若いときからコツコツと年金保険料を納めることに変わりはない。しかし、年金の受給年齢に到達したときに、年金をもらわなくても暮らしていけるほどの、多くの資産を持っていれば、「年金はもらえない」というところが違うとしている。

   金持ちは年金をもらわなくても、生活していけるだろうということなのだ。

現行制度でも「金持ち」は年金がもらえない

   ところが、現行の年金制度でも「金持ち」は年金をもらえない仕組みがある。2010年度には296万7000人が受け取る年金の一部あるいは全額の支給を停止されている(共済年金を除く)。

   厚労省は、「受け取る賃金と年金額によって計算が変わりますし、公務員から民間企業に転職するケースあるいはその逆の場合、また1年ごとに見直すため一概には言えませんが、基本的には現役世代と変わらないような収入がある人には年金を支給していません」と説明。年金を受け取る資格(厚生年金、共済年金が対象)があっても、60~65歳未満で月額28万円以上、65歳以上で月額46万円以上の収入がある人は、年金の減額や支給停止の対象になる場合があるという。

   橋下市長らのいう「掛け捨て年金」との違いを大阪維新の会に聞いてみたが、「施策の詳細については現在検討しているところです。公表できる段階にお話いたします」とのことだった。

   現行の所得による減額、支給停止制度では、どんなに資産を持っていても収入が低ければ満額支給されてしまう。このあたりの矛盾を解消しようとしているのかもしれない。