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ソフトボール出身の日ハム・大嶋匠が一軍入り 「マスコミ対応」に強い栗山新監督の期待の星

   早大ソフトボール出身として話題の日本ハム・大嶋匠(ドラフト7位)が一軍メンバーに入った。決め手となったのは打撃の良さ。栗山英樹新監督の秘蔵っ子として売り出し中であるとともに、「異色」選手の成否に関心が集まっている。

紅白戦初打席の一発で、期待の打力に合格点

   大嶋の一軍昇格(2月22日)は予想外でもあった。捕手としてもっとも重要視される守備力に不安があるからだ。それだけにサプライズともいえる人選だった。

「ホッとしています。この世界は一軍にいてナンボですから。頑張ります」

   オープン戦のベンチに入れるとあって素直に喜んだ。自分でも意外だったのではないか。それでも「打撃を評価してくれたから」と分かっている。

「守備はまだまだ。捕手の守備は簡単ではない。左打ち(右投げ)だし、実践を積ませて戦力にしたい」

   首脳陣の考えは代打として使いたいというものである。長打力もあるから楽しみなのだろう。

   紅白戦でいきなりホームラン。一軍に合流してから間もないヤクルトとの練習試合では、四球を選んだ後、なんと二盗を決めた。意外性も見せた。

   プロの世界に入った新人選手にはいくつかのステップがある。1)一軍に入ること 2)試合に出ること 3)レギュラーになること、だ。大嶋は70名を超える選手が参加するキャンプの練習からふるいにかけられて残ったのだが、まだオープン戦の一軍だから階段に足をかけたところ。「資格獲得の目標」をクリアしたといっていい。ここから出世階段を上っていくことになる。

   栗山監督が同じ1年生の新人に期待し「栗山色」を出したいのは当然だ。テレビレポーター出身だけに、何がマスコミ受けするかを知っている。

   大エースのダルビッシュ有が大リーグに行き、昨年の人気者だった斎藤佑樹は足踏み状態。中田翔も結婚で落ち着いてしまった感じ。どうしてもフレッシュな話題がほしいところなのである。

   いわば大嶋は「栗山チルドレン」の象徴。球団もマスメディアの露出を求めているだろうから、異色の大嶋はうってつけのタレントである。身長180cm、体重95kgのぽっちゃり体型と丸い顔は、漫画の「ドカベン」をほうふつさせるから、子供ファンに受けるに違いない。

   実力と人気。スポーツ紙の一面を飾るほどだから「栗山作戦」は順調といったところである。

   大嶋は小学校時代に野球をしていたが、中学校に野球部がないためにソフトボール部へ。高校、大学と10年も続けた。早大時代は13試合連続ホームランを記録する大物で、日本代表にも選ばれた男子ソフトボールのエリートだった。

   日本ハムの指名を受けたとき、大嶋の決断は明快だった。その決意は「ソフトボールにプロはないので、プロ野球に入った」

過去には陸上出身、レスリング出身選手の例も

   この異色選手には違った意味で注目している。野球以外の出身者が使えるかどうか、である。かつて他競技からの選手で成功した例はないといっていい。

   有名なところでは、メキシコ五輪の陸上100mの飯島秀雄。1969年に東京(現ロッテ)入り。中学時代に野球の経験があったこともあって「代走のスペシャリスト」として期待された。なにしろ脚に5000万円の保険が掛けられ、話題は十分だった。

   しかし、現実はけん制球などの対応に苦しみ、盗塁の数字は伸びなかった。3シーズンの通算成績は117試合、盗塁23、盗塁死17。日本シリーズでは盗塁0ながら2得点を記録した。

   一方でユニークな発言でも注目を浴びた。たとえば「陸上は前に走るだけ。野球は戻ることも必要なんだよな」

   一軍経験者として、もう一人。レスリング出身の桂本和夫がいた。彼も五輪経験者で、57年に外野手として国鉄(現ヤクルト)入団。2年間で9試合に出場、2安打(2塁打1)のみに終わった。

   大リーグにはいろいろな競技経験者がいる。学生時代にフットボールやバスケットボールをしていた選手は多いが、足が速い選手を獲得して野球を教え込んで育成することもする。イチローがあこがれたヤンキースのバーニー・ウィリアムスはその代表例だ。

   だから大リーグのスカウトのリサーチ範囲は広い。日本と大きく異なる点だ。大嶋の成否はファンとしても興味があるところだろう。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)