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日本の独壇場だったリチウムイオン電池 ウォン安と震災で韓国に抜かれる

   多機能携帯電話(スマートフォン、スマホ)や電気自動車(EV)が急速に普及するにつれて、拡大を続けているのがリチウムイオン電池の市場だ。ところが、この市場に異変が起きている。以前は日本勢が圧倒的なシェアを占めていたが、韓国勢に逆転されてしまったのだ。何が起こったのか。

08年には日本勢のシェアは50%だった

   調査会社のテクノ・システム・リサーチ(東京都千代田区)が2012年3月5日に発表した調査結果によると、11年のリチウムイオン電池の世界市場のメーカー別シェアは、サムスンSDIが前年比3.5ポイント増の23.2%、LG化学が同1.8ポイント増の16.2%のシェアを獲得。韓国勢は39.5%を占めた。これに対して日本勢は、三洋電機を含むパナソニックグループが2.3ポイント減の23.5%、ソニーが2.9ポイント減の8.5%。日立マクセルエナジーの2.8%と合わせると日本勢は34.8%で、年間ベースとしては初めて韓国に追い抜かれた。なお、四半期ベースで見ると、東日本大震災で日本国内の生産設備が打撃を受けた直後の第2四半期(12年4~6月)に初めて韓国に追い抜かれている。このときのシェアは日本が33.7%、韓国が42.6%だった。

   なお、この調査会社が統計を取り始めた08年の時点では、日本のシェアは49.4%だったのに対し、韓国は21.9%と、大きな差が付いていた。08年のリーマンショック後に続いたウォン安が韓国企業にとって追い風になったところに、震災で日本勢が大きな被害を受けた。

市場自体は6年で2.7倍に

   ただし、パイ自体は拡大を続けている。富士経済(東京都中央区)が12年2月27日に発表した「2012電池関連市場実態総調査」によると、10年に全世界で8966億円だったリチウムイオン電池の市場規模は、16年には10年比で約2.7倍の2兆4028億に成長するとみられている。EVの普及で、特に11年から市場が拡大しているという。14年頃から海外生産が本格化し、15年には日本と海外の生産量が逆転するとみられている。

   日本勢も、パナソニックグループが中国、ソニーが中国とシンガポールで生産することを表明している。震災から生産体制を回復させるのに加えて、海外移転によるコストダウンで韓国勢を追い上げたい考えだ。

   ただし、今後両国のシェアの差が縮まるかどうかは不透明な状態だ。震災直後の11年第2四半期では8.9ポイントあった差は、第3四半期では4.6ポイントにまで縮んだ。ところが、さらに震災からの復興が進んだはずの第4四半期では、再び5.1ポイントにまで差が開いている。

   日韓以外にも、中国勢が17.2%(10年)から17.7%(11年)と0.5ポイントほどシェアを伸ばしており、今後、さらに台頭する可能性もある。