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オープン戦絶不調の日本ハム斎藤 開幕投手指名がもたらす不協和音

   2012年のプロ野球は3月30日にセ、パ両リーグ同時に始まる。そこで注目されるのが開幕投手。驚いたのは日本ハムがオープン戦不調の斎藤佑樹投手を指名したことである。この予想外の人選はチーム内に不協和音を残すかもしれない。

「0点」評価のオープン戦登板後に開幕投手「通達」のサプライズ

   栗山英樹監督が「開幕投手は斎藤」と言ったのは開幕まで10日以上も前、3月19日のこと。この早さにびっくりしたし、それ以上にオープン戦でだらしのないピッチングをしたままの投手を指名したことにもっと驚いた。16日のDeNAとの試合で斎藤は6回、8安打を打たれ3失点。「0点。(途中から)見ていないよ」と栗山監督。吉井投手コーチに至っては「小学生の4番バッターにもホームランを打たれるよ」との酷評だった。

   栗山監督は好投の試合の直後に「開幕投手斎藤」を発表する腹づもりだったようでる。そうなるように昨年のセ・リーグ最下位チームを選んで登板させた、ともいえるのだが、そのシナリオが狂ったから、普段温厚な監督もきつい態度になったのだろう。

   「(開幕投手争いから)斎藤は脱落した」と担当記者は確信し、候補は武田勝、ボビー・ケッペルの二人に絞られたと思った、という。当然の予測である。

   ところが栗山監督は斎藤を選んだ。サプライズである。「将来、チームの中心なってもらう投手だから」というのが斎藤指名の理由。1年生監督が初の開幕戦に、その年のスタートより将来を見て投手起用するとは驚きである。よくいえば早実時代の甲子園優勝、早大時代の神宮での優勝経験、すなわち「もってる男」に期待したのか。

   この新監督は、斎藤に開幕先発を伝えるのに「手紙を渡した」と自ら明かしたのだから、とんだパフォーマンスである。テレビの仕事をしてきた人物ならではの、くすぐったくなるような話題作りとしかいいようがない。

   ただ、疑問に思うところもある。斎藤の開幕投手は本当に栗山監督の意思か、ということだ。球団の意向が働いたのではないか。ダルビッシュ有というスーパースターが抜けたことが背景にあるように思える。開幕戦に話題を集める人材は斎藤しかいない、と判断したとしてもおかしくはない。

   「新監督デビュー&ハンカチ王子」の図である。斎藤が開幕戦で勝利投手になれば、かなりかっこいい。営業的にはそれが理想だろう。

チーム内に不協和音が響くのは必至?

   問題はチーム内のその後だ。開幕投手というのは投手ならだれでも目標にする。それは、開幕戦に先発マウンドに登ることは、その年の投手陣の柱である、という証であり、投手自身のステータスでもあるからだ。野手も納得する投手が先発することで全力を発揮できる。開幕戦はシーズンのただの1試合ではない。

   ケッペルはともかく、武田勝はショックを受けているだろう。開幕投手はようやく巡ってきたチャンスだったし、本人も「オレの出番」と自覚していたはずだ。武田勝は昨年11勝を挙げた。12敗しているが、内容は不運が重なり勝ちゲームをいくつか失った。防御率2.46が安定さを示している。現在3年連続2けた勝利で、その投球についてはダルビッシュも「学ぶところがある投球テクニック」と高く評価する。

   プロ選手は実力と実績がすべて。監督はそれをもって選手起用する。斎藤は新人だった昨年6勝。栗山監督はいきなり監督生命をかけたような開幕戦を迎えることになる。投手陣にしこりが残ると、チーム全体に不協和音が生まれることもあり得る。開幕戦の不満が引きずったケースは過去にいくらでもある。

   「身の引き締まる思い」と言う斎藤の結果が今年の日本ハム、新監督を占うことになる。もっともつらいのは斎藤かもしれない。注目の開幕戦である。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)