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北朝鮮、米国を「犬」と罵倒 ポスターで「衛星」打ち上げPR

   故・金日成主席の生誕100年を控え、北朝鮮の「実用衛星」打ち上げに向けた宣伝ポスターが、相次いでお目見えしている。平和目的だとして打ち上げを正当化するデザインのものや、打ち上げに反対する米国を犬に例えて「犬は吠えても行列は進む」といったスローガンを掲げたものも。朝鮮半島では、犬という単語は軽蔑を示す際に使われることもあり、かなり刺激的なメッセージだ。

   北朝鮮は「金明星3号」と呼ばれる衛星を2012年4月中旬に打ち上げると発表しているが、本当に衛星が打ち上げられるのか、ミサイル実験なのかは不明だ。ただし、いずれにしても弾道ミサイル技術を活用しているため、国連安保理の決議に違反するとして日本や米国は打ち上げの中止を強く求めている。特に米国は、2月の米朝高官会議で合意していた食糧支援の中断を宣言するなど、強硬姿勢だ。

スローガンには「ミサイル」の単語も

ブログに掲載された北朝鮮のポスター。米国の反対を振り切って打ち上げに踏み切る様子を示しているとみられる
ブログに掲載された北朝鮮のポスター。米国の反対を振り切って打ち上げに踏み切る様子を示しているとみられる

   そんな中、金明星3号の打ち上げをアピールするポスターの存在が明らかになった。現時点で確認されているのは2種類。ひとつが、ハトを背景に北朝鮮の国旗入りのロケットがデザインしたもので、

「我々のミサイル計画は、世界の平和と安全の保証だ!」

とのスローガンも並んでいる。衛星は平和利用が目的だと主張する狙いがあるとみられるが、どういう訳か「ミサイル」という単語も確認できる。

   もうひとつが、「統一強盛大国」という文字が入った機関車が力強く走るのを前に、星条旗がデザインされた服を着せられた犬がほえている、というもの。掲げられたスローガンは、「犬は吠えても行列は進む」。米国の反発をはねのけ、打ち上げを通じて「強盛大国」に突き進む様子をアピールしたいようだ。また、朝鮮半島では「犬ほどのものにもなれない奴」といったように、犬は侮蔑の対象として例えられることがある。このことから、ポスターは米国を激しく侮辱しているともとれる。

   ポスターは、「チュチェ・ソングン(主体先軍)」 と名乗る利用者が開設した、北朝鮮情報を集めたロシア語のブログに3月29日から30日にかけて掲載された。

国民の反応は冷ややか

   米政府系の自由アジア放送(RFA)も4月2日の放送で2枚のポスターを紹介しており、同時に北朝鮮国民の打ち上げに対する反応も伝えている。反応は総じて冷ややかで、ある平壌市民は、

「大砲を打つのであって、どこが人工衛星なのか」
「食べて生きていくのが大変で、打ち上げには関心はない」

と不満を漏らし、北朝鮮南西部出身の黄海道の農村出身者は

「電気がなくてテレビも見られないのに、人工衛星があるかないかなんて、なぜ分かるのか」

と切り捨てた。

   聯合ニュースが4月2日に伝えた韓国情報当局の試算によると、打ち上げには8億5000万ドル(約700億円)かかるとされている。この額は、北朝鮮国民のうち1900万人の1年分の食糧の代金に相当するという。

   なお、3月31日には、北朝鮮外務省のスポークスマンが朝鮮中央通信を通じて

「われわれは、米国の誤った選択によって招かれる結果の深刻さと重大さについていまは論じたくない。米国が今からでも主権国家の平和的衛星の打ち上げを認める勇気を持ち、それを通じて敵対意思がないと言った言葉を行動で証明してみせることを期待するだけである」

などと主張。現時点では比較的抑制的な対応にとどまっている。