2024年 4月 25日 (木)

高橋洋一の民主党ウォッチ
「おカネの使い方はお上に任せろ」 消費増税論にひそむ「官僚迎合」の影

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   春になると、新社会人や新入生向けの企画が多くなる。某週刊誌では「日本経済」入門という特集をし、仕事に役立つ経済の「新常識26」という項目がある。

   その中で、「消費税増税で景気はよくなる」「ゼロ成長でも不況ではない」「今は『円高』でない」「円高は日本経済にプラスである」「デフレ脱却で景気は回復しない」「金融緩和でデフレは解決しない」などと、驚くような項目がでている。さすがに、この記事は編集部記者の執筆であり、大学でまともな経済学を教えている人は書いていない。

日本財政「破綻近い」なら大儲け?

   最近、大手新聞の某編集委員の話を人づてで聞いた。役所回りが長く、まるで役所のコピー機という感じの人だ。増税が必要というが、話は三つ。(1)日本は財政問題が深刻で、財政再建が最優先課題、(2)財政再建のためには増税が必要、(3)増税しても経済成長は可能。

   (1)ではしばしば日本財政は「○年以内」に破綻するという。しかし、これは市場ではまったく違っている。市場には国の「保険」市場ともいうべきクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)がある。危険が増すほどレートが高くなる仕組みだ。

   昨日(2012年4月11日)の日本のレートは1%。これはアバウトいえば100年に1回破綻する程度だ。世界の中でも低いほうだ。しばしば3~7年以内に破綻するという論者がいるが、その方にはどうしてCDSを取引しないのかといっている。直ちに大儲けできるはずだからだ。日本はすぐに破綻といいながら、CDSで儲けていない人は、いっていることがウソだからだろう。

   (2)は、増税の意味を取り違えている。増税とは税率を上げることだが、それで財政再建できるという人は、税が増収になることを暗黙の前提にしているか、増税を税の増収と勘違いしているかだ。マスコミの人は単なる勘違いで後者であることが多い。前者であれば、単価を上げて売り上げが増えると思い込むおめでたい人だ。

お上の「賢い」おカネの使い道、実は単なる無駄遣い

   (3)は、ちょっと深刻だ。政府が使い道をうまくすれば成長するというのだ。この話は、増税で税が増収になったとしても、その分を「政府がうまく」使ってしまうので、実は財政再建には回らなくなる。これを話す人は、前に話した(2)をすっかり忘れているのだから始末に悪い。

   しかも、「政府がうまく使えば」という件で、例えば介護などとか、知ったかぶりをさらけ出す。こうした例は官僚から仕入れるので官僚迎合が露見する。増税してそれをうまく役所が使うという論法は、増税せずに民間におカネの使い方を任せていたら経済は成長しないということだ。

   お上はおカネの使い方も下々の民間より「賢い」ので、「おカネの使い方はお上に任せるように増税する」と言っているのと同じだということを、増税を熱心に説明する某編集委員は気がつかない。これまで税金を吸い上げられ、お上が「賢く」使ったはずのおカネは、実は単なる無駄遣いだったことはいうまでもない。

   この大手新聞の某編集委員は、マスコミ界では上層階級である。その下にいる地方新聞、テレビ局、週刊誌などに「とんでも増税」を説明している。マスコミ界ではとても横柄で、下層階級の人が少しでも反論しようとすると、「不勉強」をなじられるようだ。マスコミ界では上層階級でも、役所から見れば飼い慣らされた下層階級だ。ここに書いたような話は役所が教えてくれないから、何もいえない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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