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ダルビッシュ、ヤンキース相手に快投で3勝目 それでも勝ち続けるのは難しい?

   レンジャースのダルビッシュ有が4月24日のヤンキースに勝って3勝目を挙げた。9回途中まで投げ無失点。速球と多彩な変化球を投げ分けたピッチングスタイルは、まさに「忍者」のよう。そして大リーガーたちの「理想の投手」となりそうである。

毎回走者を背負いながらの無失点

   試合を中継したBSのアナウンサーは「すごい」を連発した。10奪三振にしびれていたようである。確かに強打線のヤンキースから2桁三振を奪ったのだから立派といえるが、一方で7安打を浴び、2四球と、毎回走者を出した。それで得点を許さなかったところにダルビッシュの強さがうかがえた投球内容だった。

   最大のピンチは3回。ジーターのバント安打などで無死満塁とされた。ここでグランダーソンを見逃しの三振。続くロドリゲスを三ゴロ併殺打に切って取った。1本打たれていたら一気に崩れたかもしれない場面だった。

   「三振は狙い通り」とアンダーソンへの投球を振り返った。相手は昨年の打点王だけに勝負どころだった。ロドリゲスは球界有数のスラッガーだが、全打席ともバットをまともに振らせなかった。速球と変化球のコンビネーションで主力打者をほんろうした。

   現在、どの投手も落ちるボールを投げる。一時代前の速球とカーブの組み合わせではもう抑えることはできないほど打撃技術は向上している。大リーグの20勝投手は時速150~160kmの速球と左右に落ちる複数の鋭い変化球を持つ。

   ダルビッシュもその一流投手のタイプなのだが、変化球の種類の多さは傑出している。「七色の変化球」だ。こんな多彩な変化球を内外角に自在に投げ分ける投手は見当たらない。この日、投げ合ったヤンキースの黒田が「(ダルビッシュの)変化球の精度は高い」とそれを認める。「忍者ダルビッシュ」である。そしてコントロールのよさがそれを支えている。

   取るべき局面で三振を取り、ゴロを打たせてアウトを稼ぐのは省エネにつながる。119という投球数が無駄のなさを裏付けていた。このような投手は、間違いなく大リーグの投手たちにとって「理想」であり、どの投手もビデオで研究することだろう。

「夏場ピーク」の大リーグでは、6月以降が勝負どころ

   といってこのまま勝ち続けることは難しい。大リーグでは各チームとも気温が上がるのと比例して調子を上げていく。おおざっぱにいえば、4、5月は調整期間で、6月から調子を上げ、夏場を勝負どころとする。開幕をベストとする日本とはかなり違う。どのチームもいまは手探り状態といっていい。

   ダルビッシュについていえば、変化球の投げすぎが気にかかる。投球数が増えていくと、どうしても疲労がたまる。速球と変化球の割合がこれからの課題になる。それと中4日の登板間隔はシーズンが進むにつれ疲労を蓄積させる。間違いなく「疲れとの戦い」が待っている。

   「日本球界の力を見せつける」と言って乗り込んだ大リーグ。ダルビッシュの変幻自在のピッチングにその強い意志が表れていた。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)