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太陽光発電の買い取り価格決定 またまた電気料金値上げのカラクリ

   太陽光発電でつくられた電気を電力会社が買い取る価格を、1キロワット時あたり42円(出力10キロワット以上、税込み)とする案が2012年4月25日、経済産業省の「調達価格等算定委員会」で示された。

   太陽光などの再生可能エネルギーの「全量買い取り制度」は7月に開始されるが、一方ではそれを見越して、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の建設ラッシュがすでに始まっている。

買取価格は発電事業者のほぼ要望どおり

メガソーラーでも電気料金は上がる?(写真は、東電本社ビル)
メガソーラーでも電気料金は上がる?(写真は、東電本社ビル)

   太陽光発電による電気の買い取り価格案は、メガソーラーの建設費やランニングコストに加え、事業の採算性を評価する際に使われるIRR(内部収益率、太陽光発電の場合は税引き前で6%)をもとに決められた。

   1キロワット時あたり42円の買い取り価格は、発電事業者の団体である太陽光発電協会が事前の意見聴取で主張した、税抜きで1キロワット時42円の要望価格にほぼそっている。

   当初は、現行の住宅用の余剰電力の買い取り価格が1キロワット時あたり42円のため、「事業を前提とする全量買い取りの場合は30円台が妥当」との意見もあったが、規定に「制度導入後の3年間は利潤に配慮する」とあることから、初年度は高めに設定されたとみられる。電力会社の買い取り期間は、メガソーラー(事業用)が20年間で、家庭用が10年間だ。

   とはいえ、電力会社にかかる買い取り価格はユーザーに転嫁される。すでに現在も、住宅用の余剰電力の買い取り価格(1キロワット時あたり42円、12年度)が「太陽光発電促進付加金」として、約17円(モデルケース、1キロワット時あたり0.06円×1か月の使用電力量)が電気料金に上乗せされている。

   東京電力は、「7月からの買い取り価格が決まっていないので、まだ何も想定していませんが、現行の太陽光発電促進付加金に相当するもの(負担)が増えることになろうかと思います」と説明している。

   各家庭や企業の電気料金にどの程度上乗せされるかわからないが、いずれにしても負担が増すことは間違いない。

中国製ソーラーパネルが日本を席巻する?

   一方、再生可能エネルギーの全量買い取り制度が始まる7月の稼働を目指し、メガソーラーは建設ラッシュだ。

   ソフトバンクのSBエナジーが手がけるメガソーラーだけで、京都市(発電出力4200キロワット)や群馬県榛東村(2400キロワット)が建設に着工。さらに徳島県松茂町(2800キロワット)と同小松島市(2800キロワット)、鳥取県米子市でも3万キロワット級のメガソーラーの建設計画が進行している。

   たしかに、メガソーラーは電力会社が電気の全量を1キロワット時あたり42円で、20年間にわたり確実に買い取ってくれるのだから、儲かりそうだ。利幅を大きくしたければ、メガソーラーの建設費用やランニングコストをできるだけ安くすればいい。

   メガソーラーの場合、出力1キロワットあたりの初期投資額は約30万円とされる。この中にはパネルのほか、架台や直流を交流に変換するパワーコンディショナー、工事費(用地の取得を除く)が含まれているが、最もコストがかかるパネルを安く大量に仕入れれば、コストは下がる。

   そうなると、中国メーカーは圧倒的に強い。11年度は円高の影響もあったとはいえ、「国内メーカーより3~4割安く出回っている」(メーカー関係者)という。

   家庭用となれば、「安く仕上げたい」というニーズが強まるので、中国産ソーラーパネルが日本の住宅の屋根を席巻する可能性がないわけではない。