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「どちらが勝つか」これは面白い 財務省が朝日新聞に異例の訂正要求

   財務省が、朝日新聞の記事に対し、訂正を求める抗議文を財務省サイトで公開した。抗議文のネット公表は同省初という「異例」の事態だ。

   ネット上では、「圧力に屈するな、朝日新聞」という声の一方、「役所はこういう反撃をどんどんすべき」と真逆の反応もある。それぞれを支持する人たちが、「朝日新聞VS財務省」の「勝ち負け」の行く末に注目している格好だ。

朝日新聞「得られた情報と認識の違いがあり…」

財務省がサイトで朝日新聞への抗議文を載せた。
財務省がサイトで朝日新聞への抗議文を載せた。

   財務省は2012年5月1日、同省サイト「新着情報」欄に朝日記事への「抗議」を公開した。中を見ると、4月5日と13日に朝日新聞の報道局長あてに送ったそれぞれの抗議文も紹介している。

   「事実に基づかない誤ったイメージを世論に与えた記事であることを認めた訂正記事」を求めたが、事態が進展しないのでネット公開に踏み切ったという。

   問題視している記事は、4月5日付朝刊の「民主党政権 失敗の本質」の第1回だ。東京最終版でみると、1面トップで始まり、2面にも続く大型記事だ。「予算も人事も結局 財務省」(2面見出し)などと、民主党政権と財務省の深い関係を描いている。勝栄二郎事務次官ら省幹部の実名も登場している。

   抗議文(4月5日)が具体的に指摘した「事実誤認」は、大きく分類すれば5点だ。(1)2009年の総選挙直前、後に首相になる鳩山由紀夫氏と財務省幹部(複数の実名)らが「接触を重ねていたという事実はありません」、(2)記事では、事務次官の勝氏と「前国交事務次官の竹歳誠」が、「東大在学中からの友人」とあったが、「卒業年次も3年異なり、学生時代全く面識がありません」、といった調子だ。

   朝日新聞社広報部に5月2日、確認したところ、

「当社の取材で得られた情報と認識の違いがあり、その点について財務省に説明しているところです」

と文書でコメントした。

   ネット上では例えば、東京新聞の長谷川幸洋・論説副主幹がツイッターで、「これは面白い!!がんばれ朝日新聞」と反応している。普段は朝日新聞を批判している「朝日新聞の偏向報道から子供の未来を守る!会」のブログでは、今回の件に限っては「真摯な反省のみられる勇気ある報道」と朝日新聞をほめ、「財務省の圧力に負けるな!」とエールを送っている。

「朝日も財務省もどちらも信用してないよ」

   一方で、経済学者の池田信夫氏はツイッターで、「『勝=竹歳ライン』という霞ヶ関の常識が嘘だったのは驚き。役所はこういう反撃をどんどんすべき」と財務省の抗議を評価した。

   もっとも、ネット配信された関連ニュースのコメント欄などには、「元々、朝日も財務省もどちらも信用してないよ」と冷めた見方も少なからずあった。

   財務省が新聞社へ抗議文を出したのは約14年ぶりで、抗議文をサイトで公表するのは初めてという。他省庁はどうか。

   宮内庁は、週刊誌やテレビ情報番組の報道に対し、最近では年に4、5件ほど、反論コメントをサイトで載せている。2012年に入ってもすでに2件、訂正要求をしている。

   農林水産省によると、「かつて、かなり細かい点まで訂正を求め、省サイトで公開していた」時期もあった。しかし、最近では「抗議文のサイト公開の例は見あたらない」。報道に抗議をすればサイトで公開する原則に変化はないが、「報道陣に誤解が生じないよう、取材の際に丁寧な説明を心がけている」そうだ。

   厚生労働省サイトには、1997年の厚生省当時の新聞社に対する抗議文が掲載されている。同省関係者は「以降の(サイト)掲載はないようだ。なぜないのかの経緯はよく分からない」と話した。

   ある別の省の広報担当者は「報道に間違いはつきものですからね。最近でも結構ありますよ。いちいち対応していたら大変でしょう」と話した。この省のサイトでは抗議文掲載の措置は取っていない。