J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

日航好決算に全日空イラつく 「フェアな競争といえるのか」

   経営再建中の日本航空が2012年3月期連結決算で過去最高益を上げるなど好業績を達成したことに対し、ライバルの全日本空輸が焦燥感を募らせている。全日空の伊東信一郎社長は5月17日の記者会見で「日航への特例がずっと続けば、我々との差が広がる。フェアな競争環境にあるといえるのか」と強い口調で述べ、日航の急回復ぶりへの危機感を露わにした。

経営破たんで様々な「優遇」

11年10月撮影
ANAの伊東社長(11年10月撮影)

   日航の2012年3月期連結決算は、売上高が1兆2048億円、本業のもうけを示す営業利益が2049億円、最終(当期)利益が1866億円。営業、最終利益ともに過去最高を更新した。対する全日空の同連結決算は、売上高が1兆4115億円、営業利益は970億円、最終利益281億円。売上高では日航を2000億円超上回ったし、営業利益は過去最高の「好決算」だが、その営業利益でさえ日航の半分以下、最終利益に至っては実に約7分の1というレベルだ。

   日航が達成した好業績は、経営破たんに伴って断行した従業員の約3分の1に上る1万6000人の削減や赤字路線の撤退など大規模なリストラの効果が大きい。さらに、破たんに伴い多額の評価損を計上した結果、ばく大な繰越欠損金(赤字)が発生し、法人税をほぼ支払わなくてよい状況になっている。金融機関による債権放棄も受けて金利負担も軽く、利益を大きく押し上げる結果となった。

再建と公正のバランスは?

   破たんによる効果でV字回復を達成し、今や以前にも増して巨大な力を身につけつつある日航。日航の破たん前後から「公平公正な競争環境を」と訴え続けてきた全日空にとっては、「競合会社である我々のことを考慮しないで日航支援が優先されているのではないか。市場がゆがめられていないか」との不信は根強い。日航は多額の繰越欠損金により、今後しばらくは法人税を支払わない状況が続く見通しで、全日空との差が一段と広がる可能性は絵空事ともいえない。

   もちろん、伊東社長は会見でも「日航の再建は会社更生法に基づき、合法的、適切に行われた。法律がおかしいとは言わない」と語る。ただ、それでも「市場はこのままでいいのか。日航と全日空との最終利益の差が今後も続くとしたら、かなりの差が出ると危惧する」と厳しい表情を見せた。

   こうした全日空の懸念に対し、前田武志国交相は18日の記者会見で、「お互いに競争できる環境になった時、一方には手厚い支援があったじゃないか、という議論は当然あると思う。国交省としては公平公正な競争環境を作るよう、やれることはやる」と述べたが、具体的な言及はしなかった。

   多額の税金を投入した日航の再建は必ず成し遂げられなければならない。一方で市場の健全な競争環境は保たれねばならず、日航再建はさまざまな課題を抱えている。