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JA全農、三菱商事と太陽光発電 国内最大級、全国の農家やJA施設の屋根にパネル

   全国農業協同組合連合会(JA全農)と三菱商事が全国の農家やJA関連施設の屋根にソーラーパネルを設置し、電力会社に電力を売却する太陽光発電事業に参入することになった。全国にネットワークをもつ企業や団体が自前の関連施設の屋根を使い、全国横断的に太陽光発電に取り組むのは初めて。

   2014年度末までの3カ年で、国内最大級の最大出力20万キロワットを目指すという。JA全農の参入は、ビジネスとしての太陽光発電の実現性の高さを物語っており、再生可能エネルギーの普及に弾みがつきそうだ。

屋根にパネルのルーフトップ型

   国内の太陽光発電としては、ソフトバンク子会社の「SBエナジー」が「全国の複数拠点で合計20万キロワット以上」の発電を検討中と表明している。JA全農の最大出力はこれに匹敵するが、同じ太陽光発電でも両者の手法は異なる。

   ソフトバンクは北海道などで休耕田など大規模な土地を新たに確保してパネルを置く「フィールド設置型」だが、全農は屋根の空きスペースにパネルを載せる「ルーフトップ型」と呼ばれるシステムだ。一箇所で比較的大規模な発電を目指すソフトバンクに対して、JA全農は既存施設の屋根を活用し、「塵も積もれば山となる」式に全国で発電し、電力会社に全量を売却する計画だ。

   かつて太陽光発電に消極的だった経済産業省や電力会社は、太陽光発電で原発1基分(最大出力100万キロワット)の電力を賄うには、JR山手線の輪の中に匹敵する面積に太陽光パネルを設置しなくてはならないと、ハードルの高さばかりを強調してきた。これに対して、再生可能エネルギー推進派は、全国の既存施設の屋根などにパネルを設置することで普及は可能と主張してきた。今回のJA全農の試みは、まさにこの実証実験に他ならない。

総事業費600億円

   JA全農は北海道から沖縄まで、全都道府県の農家やJAの畜舎、選果場、物流施設などの屋根から適地を選び、2014年度までの3カ年で400~600カ所にパネルを設置するという。合計の面積は東京ドーム約43個分になる。現行目標の20万キロワットという最大出力は、JA全農が適地と考える屋根に設置した場合の試算で、将来的に屋根以外にもパネルを設置することができれば、最大出力はさらに拡大が可能だ。

   気になる総事業費は約600億円。このうち480億円は金融機関から借り入れるが、「480億円は12~15年で返済できる。屋根を借してくれた農家などには売電収益の3~5%を支払う」という。

   7月から始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を利用し、JA全農と三菱商事などが専門の事業会社を9月に設立する。JA全農は「太陽光発電の実例が見えてくれば、個人の農家も付いてくる」とみている。

   JA全農は「地球の環境保全に積極的に取り組む」ことを経営理念に掲げており、原発事故を教訓に注目される再生可能エネルギーに率先して取り組むことで、本業の農業でも「環境重視」のイメージアップを図る考えもある。JA全農が全国で太陽光発電を軌道に乗せることに成功すれば、追随する企業が現れ、全国に20万キロワット級の太陽光発電が相次ぎ生まれる可能性もある。