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離党に「国替え」、そして強制「刺客」 「小沢ガールズ」それぞれの末路

   2009年衆院選の民主党躍進と政権交代の象徴的存在となったのが、いわゆる「小沢ガールズ」だ。だが選挙で大きな役割を果たした小沢一郎元代表が民主を離党すると、「ガールズ」たちはバラバラになった。

   そして解散。離党に「国替え」、そして強制「刺客」と末路はさまざまだが、支持基盤が弱いだけに今回の選挙では苦戦が必至だ。

「地元の信頼を保てなかった」田中美絵子議員

「止めに来た」

   扉の前に立ちふさがるひとりの女性が、部屋の中に入ろうとする男性の腕を取ってその顔を見つめる。目には涙をたたえているようだ。インターネットの掲示板で「まるで昼メロ」と茶化されたこのやり取りの「主役」は、民主党の田中美絵子議員。衆院が解散した2012年11月16日、民主党幹事長室に離党届を持って現れた初鹿明博議員を翻意させようと、待ち受けていた。

   「民主党に初鹿さんは必要です」「初鹿さんみたいに優秀な方はいません」と、今にも泣きそうな表情で説得にあたる田中議員。だが初鹿議員は「気持ちは分かりますが、決めたことなので」とこれを制し、中に入った。扉が閉まると、田中議員はうつむき加減に立ち去った。確かにちょっとしたドラマのワンシーンを思わせるが、議員の行動にしては少々奇妙にも映る。

   田中議員は「小沢ガールズ」のひとりだが、小沢氏が2012年7月に民主を離党して「国民の生活が第一」を立ち上げた際にも残留した。民主分裂の原因となった消費増税法案の採決には賛成票を投じたとも報じられている。前回衆院選で初当選を果たした際には「美人議員」としてもてはやされたが、2012年6月14日発売の「週刊新潮」で、国土交通省のキャリア官僚との不倫スキャンダルが暴露された。6月26日付の公式ブログで「世間に大きな誤解をあたえ、みなさまにご迷惑をかけることとなった」と謝罪する一方、不適切な関係はないと否定したものの、信用を大きく損ねてしまった。

   前回は石川2区から出馬したが、今回は東京15区に「国替え」して臨むことになりそうだ。複数のメディアによると、石川県連代表の一川保夫・元防衛相は田中議員が「地元の信頼を保てなかった」と県連の会合で語ったという。同じ選挙区からは、「国民の生活が第一」の幹事長を務める東祥三議員が出馬する。

「国民の皆様にご支持いただけなければ、潔く散ればいい」

   小沢氏離党の際に行動を共にし、「国民の生活が第一」から出馬するのが三宅雪子議員だ。こちらも地元、群馬を離れて国替えする。しかも新たな選挙区は、野田佳彦首相と同じ千葉4区。三宅議員は、国民の命と暮らしを脅かす一番の責任者が野田首相であり、国民の命を守るために首相と対決するのだと決意表明した。11月19日放送の「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)では三宅議員に密着、群馬の支援者の前で国替えの経緯を説明する最中、思わず声を詰まらせる場面があった。解散の数日前に小沢氏から打診されていたようで、「君は腹が据わっているから大丈夫だろう」と言われたと明かしたが、小沢氏から強制的に刺客にされたというのが真相だろう。

   威勢はいいが、苦戦は必至だ。前回衆院選、野田首相は16万2000票余りを獲得して圧勝。対する三宅議員は「民主ブーム」に乗り切れず、群馬4区で自民党の福田康夫元首相に敗れ、比例で復活当選を果たしている。

   前回選挙の目玉候補だった福田衣里子議員は、解散が決まった11月16日に民主党に離党届を提出し、「みどりの風」に入党した。離党に際しての思いを、自身のブログにつづっている。

   政権奪取後の民主党は、「徐々に、『自公政権のころと似た政策、強いものによる目線でもって強いものの意見だけで政策決定する』ようになってきていると感じ始めました」と福田議員。しかし一方で、「それでも、民主党を簡単には諦めるわけにはいかない」との思いから小沢氏の「生活」には参加しなかった。9月の民主代表選では候補者擁立まで模索したという。それでも思いがかなわず、離党や新党を考えているさなかでの解散だったようだ。

   薬害肝炎九州原告団代表として活動し、前回衆院選では長崎2区で自民の久間章生・元防衛相を破る「金星」を挙げた。今回は比例での立候補になるとみられる。ブログでは、自身が最良と考える事柄を訴えて「国民の皆様にご支持いただけなければ、潔く散ればいい」と覚悟を示している。