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自民「大勝予測」に引き締め躍起 「油断させるためのマスコミの陰謀」との声も

   「自民大勝」を予測する世論調査の結果に、自民党が「引き締め」に必死だ。過去には、世論調査の結果に反して大敗を喫した例や、大勝した選挙でも、気のゆるみで「相当、票を取り逃した」とされるケースがあるからだ。

   2012年12月6日の朝刊に掲載された選挙戦序盤の調査結果では、いずれも公示前の自民党の議席数120に対して倍増を予想。常任委員会に委員の過半数を確保できる「絶対安定多数」(269議席)を超える予測をする新聞社も複数あった。

「慢心や緩みあれば有権者の気持ちが離れる」

   これを受ける形で、石破茂幹事長は12月6日、遊説先の盛岡市内で、

「慢心や緩みがあれば、有権者の気持ちが一気に自民党から離れてしまう」

と話し、候補者に対して警戒するように求める通達文を出す考えを明らかにした。また、朝日新聞によると、安倍晋三総裁は、

「『自民党優勢報道』に踊らされ、惑わされ、有頂天になり、票固めもせず投票日を迎えれば、勝利を手にすることはできない」

とする「檄文」を全ての公認候補に送ったという。

   ここまで警戒するのは、自民党には世論調査をめぐる過去の苦い経験があるからだ。

   例えば、98年の参院選では、情勢調査では自民党は60議席前後を獲得する見通しだと伝えられていた。だが、実際の議席数は44と惨敗だった。97年の消費税率の引き上げや、それにともなって景気が後退する中、橋本龍太郎首相(当時)の恒久減税をめぐる発言が投票直前に二転三転したことが響いたとみられている。この結果、橋本氏は退陣に追い込まれた。

00年衆院選は「寝てればいい」発言で情勢変わる

   00年6月25日に投開票された衆院選でも、この教訓は生かされなかった。森喜朗首相(当時)は、00年5月に「日本は天皇を中心とした神の国」などと発言するなど、相次ぐ問題発言で支持率が低迷していた。それでも、選挙戦序盤の世論調査では、自民党は「単独過半数確保の勢い」と報じられた。当時も、

「勢い乗る自民 引き締め躍起 惨敗の'98参院選も情勢調査では好調」(00年6月21日、東京新聞)

と警鐘を鳴らす報道があったのだが、森氏は好調を伝えられて

「(投票先をまだ決めていない人は)『そのまま関心がない』と言って寝てしまってくれれば、それでいいが、そうはいかない」

と口を滑らせた。

   選挙戦の序盤では、無党派層など投票先を決めていない有権者も多い。このため、投票日までに態度を変える人も多く出ることがある。森氏の発言は無党派層の反発を招き、実際に投票日を迎えてみると、深谷隆司氏や島村宜伸氏など現役閣僚や閣僚経験者が落選。惨敗に終わった。この結果を、朝日新聞は6月26日の紙面で、

「寝た子を起こした自民党 票めざめ民主弾む」

と皮肉っている。

   自民党が大勝した05年の「郵政選挙」でも、世論調査の結果が票固めに影響したとの指摘が根強い。

   このような経験を踏まえ、今回の世論調査の結果についても、自民側からは

「自民を油断させようとするマスコミの陰謀なのではないか」

という声もあがっている。