J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

中国で北朝鮮核実験への抗議デモ 警察は参加者を一時拘束?

   国際社会の警告を無視して核実験を強行した北朝鮮に対して、友好国である中国の態度に変化が出てきた。広東省広州市では、反核を訴える抗議デモが起きた。北朝鮮を批判する市民レベルの動きは極めて珍しい。

   これまでも北朝鮮がミサイル発射実験や核実験を起こすたびに、中国は表向きは別にして、基本的には擁護する立場をとってきた。だが度重なる「暴挙」で、中国共産党指導部や中国軍は北朝鮮に厳しい視線を送るようになっているともいわれる。

「北朝鮮の核実験は、恩をあだで返す行為だ」

   広州市でデモが起きたのは2013年2月16日の11時ごろ。現地のインターネットニュースによると、ミニブログ「新浪微博」上での呼びかけで市民数人が広州市人民公園に集まり、2月12日に地下核実験を実施した北朝鮮に対する抗議活動を行ったという。記事には、微博上に出回った写真が掲載された。公園と見られる場所で男性3人が「必要なのは平和、核武装はいらない」と手書きの横断幕を掲げる様子や、別の場所で警官隊や見物人に囲まれる男性の姿が写っている。ただしこの記事は既に削除された模様だ。

   米ニューヨークに拠点を構える華人系の独立メディア「新唐人」は、さらに多くの写真をネット上に載せている。平和や反核の主張だけでなく、「北朝鮮の核武装で中国は被害に合う」「北朝鮮の核実験は、恩をあだで返す行為だ」と、明確に北朝鮮を非難する内容だ。

   このデモで、警察は5人を一時拘束した。微博には、デモの参加者を称賛する一方、中国当局や核実験を実施した北朝鮮を激しく非難するコメントが並んだと記事では紹介している。書き込みの中には、「次はさらに大規模な核実験になるだろう」と、その悪影響が中国に及ぶのを恐れる声もあった。

   国連安全保障理事会では、北朝鮮への制裁決議採択に向けて関係国が折衝中だ。中国も、今回ばかりは制裁強化に反対できないのではとの見方が出ている。憶測が飛び交う中、2月12日に放送された「報道ステーション」(テレビ朝日系)に出演した東京財団研究員の小原凡司氏が興味深い発言をした。駐中国日本大使館の防衛駐在官として北京に滞在していた2003年~06年の間、中国人民解放軍の複数の軍人と交流。そのうえで「(軍人たちは)北朝鮮について疎ましく思っていた。その中の何人かは『北朝鮮をこころよく思っている人はひとりもいない』と話していた」と明かしたのだ。

中国の影響力はあまり大きくない?

   中国共産党指導部の「北朝鮮観」に変化が出ているとの指摘もある。「週刊現代」3月2日号は、党幹部のコメントを紹介。北朝鮮側が中国に核実験の通告をしたのが前日夜で、中国側が反対の意を示すと「前日に連絡したのだから、わが国の誠意をありがたく思うべきだ」と反発してきたと明かす。「こんな非礼な国が、どこにあるか」と、この幹部は怒り心頭だ。

   一方、習近平総書記と金正恩第1書記はこれまでの中朝関係とは違って「冷めた関係」に変わったという。中国側は食料や重油などを毎年大量に支援しているが、北朝鮮はこういった援助を基に核を開発し、中国の警告に耳を貸そうとしない。これ以上支援し続ける理由がどこにあるのか、というわけだ。

   とは言え、中国が一気に「反北朝鮮」に回ることは考えにくそうだ。前出の小原氏は、中国の最高指導部は、朝鮮戦争以来の「血で固めた盟約」で結ばれた中朝関係を裏切れば国内外で信用を失うと考えているという。それ以上に、政治的ライバルがこの「裏切り行為」を利用して政権の足元をすくうのを恐れているようだ。

   小原氏は、北朝鮮が中国に全面的に従わないのは今に始まったことではなく、その影響力は、実際はあまり大きくないことをにおわせた。だが中国が「締めあげ」て北朝鮮が苦境に陥れれば、今度は北朝鮮軍が暴走して戦争に巻き込まれかねない。自分に火の粉が降りかかるのは避けたいのが本音だろう。