J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「リコール製品、チェックを怠るな」 重大事故・火災が年間125件も発生

   長崎市で起きた4人死亡のグループホーム火災は、リコール対象製品を再確認することの大切さを思い起こさせた。対象製品が身近に多いことが消費者庁の調べで分かった。

   2012年6月に開設された消費者庁の「リコール情報サイト」にアクセスしてみると、リコール製品の多さに驚く。13年2月上旬までの1年間で新たに追加されたリコール商品は自動車、家電、寝具、食品など150件以上に上り、2月中だけで30件以上を数える。

重大事故発生、一流企業製品も多く

   「重大事故(火災)が発生しています」――。

    こうした注記を付けてメーカー・機種名の確認を消費者に促している製品だけでも複数ある。長府製作所「石油ふろがま・追焚付石油給湯器」、パナソニック(旧松下電器産業)「電気こんろ」、ノーリツ「石油給湯器」、フランスベッドやパラマウントベッドを含むメーカー7社の「介護ベッド用てすり」など。製造元は、一流メーカーも多い。高齢者・子供向け商品もベビーシートやベビーシャンプー、前出の介護ベッド用手すりなど10件が表示されている。

   2月中の新規のリコール登録としては、千葉県の幼児が重傷やけどを負うなどの被害事例が相次いだ携帯型「ウイルスプロテクター」、コーヒーメーカー、食料品や化粧品など33件が加わっていた。

   内閣府の資料によると、リコール情報を知らずに欠陥・不具合製品を使い続けたことが原因で、2011年度は命にかかわる重大事故・火災が125件も発生している。 長崎市のグループホーム火災で問題となっているTDKの加湿器も、14年前の1999年1月にリコールを届け出て回収を進めてきたものの、回収率は販売した約2万1000台のうち74%で残る約5500台は未回収の状態だった。

政府の「リコール情報サイト」認知は、2割以下

   製品に欠陥などが確認された際、メーカーは国への報告義務を負うほか、場合によってはリコール情報を公表して回収を進めなければならない。だが、企業規模によって製品回収や危険性について周知の度合いは異なってくる。

   パナソニック(旧松下電器)の石油ヒーターで一酸化炭素中毒事故が相次ぎ、05年4月にリコール製品となった際、同社が回収や修理作業に手間取る中で新たな死亡事故が発生。国からの命令もあって同社はその後、国内全世帯にはがきを送ったり、テレビCMを危険性の訴えなどに切り替えて大々的な回収作業を行った。

   このケースと今回を比べて「リコールと回収情報の周知が手ぬるかった」と指摘する声は少なくない。TDKは「新聞広告などで周知に努めてきた」とするが、長崎市の火災以外にも全国でこれまで46件の事故が起きていた。

   一方、公的機関を通じたリコール製品に関する周知活動も心細い状態で、前出の「リコール情報サイト」の認知度も12年10月の内閣府のアンケート調査では8割以上がその存在を知らなかったという。

   リコール製品の周知や回収をめぐり、消費者問題の専門家らはこう指摘する。

   「製品がリコール対象となって回収の必要が出てきた場合、メーカーは新聞広告ばかりでなく、もっときめ細かな広報態勢を敷くべきだ。家電についても、メーカーと販売店が知恵を出し合ってどの製品を誰に売ったか分かるような態勢作りが今後必要になってくる」

   ネット上では「高齢者を預かる施設なら、使用している家電がリコール対象かどうか、定期的に確認すべき」「製造元が一流メーカーということで過信は禁物」といった声もでている。