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日テレ参入と角川GHDが「買い」 ドワンゴ株「ネット選挙」も材料に急騰

   「ニコニコ動画」を運営するニワンゴなどを傘下にもつドワンゴは、筆頭株主のエイベックス・グループ・ホールディングス(エイベックスGHD)が保有する株式の一部を、角川グループホールディングス(角川GHD)と日本テレビ放送網のそれぞれに譲渡すると、2013年3月4日に発表した。

   これにより、持ち株比率でエイベックスGHDは3位株主となり、角川GHDが3位から2位に浮上。ドワンゴの川上量生会長が16.85%で筆頭株主となった。

エイベックス、持ち株比率低下で影響力薄れる?

ドワンゴ株が急騰、エイベックスが日テレと角川GHDに売却した(写真は、「ドワンゴ」のホームページ)
ドワンゴ株が急騰、エイベックスが日テレと角川GHDに売却した(写真は、「ドワンゴ」のホームページ)

   ドワンゴによると、エイベックスGHDが現在保有する同社株4万900株(持ち株比率20.04%)のうち、1万6326株(約8%)を38億2700万円で売り出し、角川GHDと日本テレビが8163株(4%分)ずつ取得する。引き渡しは2013年3月8日。

   角川GHDは、現在保有している1万6800株(8.23%)とあわせて、2万4963株(12.24%)を保有する2位株主となる。

   ドワンゴと角川GHDは10年10月にコンテンツ配信事業で包括的な業務提携を結んだ。さらに11年5月には資本提携へと発展させ、株式の持ち合い関係を強化。13年2月末には、ニコ動の広告などを扱うスカイスクレイパーの株式をドワンゴが譲渡し、角川GHDが子会社化するなど、ますます関係が深まっていた。

   一方、エイベックスGHDの保有は2万4574株、持ち株比率で12.04%に低下する。同社は2006年2月にドワンゴと業務・資本提携を結び、ドワンゴを持分法適用関連会社(持ち株比率20%超)にしていた。

   持分法適用関連会社であれば、出資や人事、技術、取引先などの経営判断の場面で一定程度の影響力を行使できるが、数字のうえではそれも薄れることになる。

   今回の株式譲渡についてドワンゴは、事業環境の変化による新たなビジネスの創出や業容拡大のため、株主の多様化を図ることが目的としており、ドワンゴとエイベックスGHDで協議のうえ、エイベックスが保有株式の一部を売出すことに合意したという。

   また、両社の業務・資本提携は今後も継続するとしている。

ドワンゴ株、5日続伸で年初来高値

   インターネット動画配信サービスの「ニコニコ動画」は、ドワンゴの主力事業の一つであり、さらに成長が見込める分野だ。最近では、12年11月29日の衆院選での党首討論会が注目を集め、この日のドワンゴ株は終値で前日比1万3700円高の19万6100円と急騰したのは記憶に新しい。

   有権者や投資家らに注目されてアクセスが増えると期待されたためで、株式市場では「政治家の情報発信の場として(ニコ動の)影響力が強まる」とみられ、今後の業績向上につながるとの見方が広がった。

   夏の参院選からはネット選挙が解禁される見通し。それに加えて、日本テレビと角川GHDへの株式譲渡を材料に、2013年3月5日の同社株は終値で5日続伸の前日比1万800円高の27万8700円と、年初来高値を付けた。

   今回、8163株(4%)を取得した日本テレビにとっては、今のうちにニコ動との連携を深めておくことに、旨みはありそうだ。

   半面、「ニコニコ生放送」に有名人を使うなどテレビとの同質化する傾向も指摘されていて、ニワンゴの取締役を務め、「ネットの多様性を捨てたら、テレビの質に勝てない」などと苦言を呈していた西村博之(ひろゆき)氏が2月18日付で辞任するといった事態も起こっていた。