救急搬送先は電話でしか探せないのか 埼玉「受け入れ36回不可」の改善策

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   埼玉県久喜市の75歳の男性が、救急搬送の受け入れを36回にわたって断られた末に死亡した。救急車が男性宅に到着するまでわずか6分だったが、最終的に受け入れを許可した茨城県の病院に運ばれるまで約3時間を要した。

   救急隊員は、受け入れ要請の電話をかけては断られる、という手順を繰り返さざるをえなかった。だが自治体によっては、IT(情報技術)を活用して「どの病院が受け入れ可能か」を検索する仕組みができているようだ。

救急車が何時何分どこの病院に搬送したかが分かる

iPadが貴重な命を救うか
iPadが貴重な命を救うか

   久喜市の男性が死亡したケースは、救急隊員が病院に受け入れの可否を照会するたびに「処置困難」「ベッド満床」「専門が異なる」といった理由で断られ続けた。

   今回と同様の悲劇は過去にも起きている。2007年12月、大阪府富田林市で89歳の女性が、また2009年1月にも兵庫県伊丹市で69歳男性が、多数の医療機関に受け入れを断られて亡くなった。2006年10月には、奈良県の妊婦が19病院に断られ、搬送先の大阪府の病院で死亡した。

   消防庁に電話取材すると、救急医療機関を選ぶ際は、隊員が消防法に定められた「観察基準」に沿って患者の容体を観察し、自治体が作成する搬送先リストを参照しながら受け入れ先を選定するという。要請の電話は、病院との間に設けられた「ホットライン」につながるが、電話の時点で病院側に患者を受け入れてもらえる余裕があるかは隊員には分からない。

   都内在住の医療ジャーナリストに聞くと、隊員は患者の病状から、病院までの距離や交通事情、専門の医師がいるか、などを瞬時に判断する必要に迫られるという。

   2013年3月5日放送の「ニュースウォッチ9」(NHK)で、帝京大学医学部の坂本哲也教授は、高齢化により救急車を必要とする人が増えている半面、病院側では救急用ベッドや医師の数が追いついていない点を指摘。病院同士が連携して、例えば自分の病院は満床でも隣は空きがあるといったように、受け入れ状況の可否を視覚化した情報システムの必要性を強調した。

   実は自治体によっては、既にこうした「見て分かる」救急医療情報の仕組みが構築されている。代表的なのが、佐賀県の「99さがネット」だ。既存の情報システムを改良し、2011年4月から運用を開始した。県の健康福祉本部医務課、円城寺雄介氏はJ-CASTニュースの取材に、「通常画面とは別の専用サイトに救急隊員がアクセスすると、どの病院に専門医がいるか、救急車が何時何分どこの病院に患者を搬送したか、ひと目で把握できます」と説明する。県内にある49台の救急車にタブレット型端末「iPad」を常備させた。隊員は病院の状況を把握しないまま電話で問い合わせる代わりに、iPadで病院を検索し、受け入れ可能なところを探し出せるというわけだ。

診療可能な病院を検索するシステムは全国にあるが…

   実はウェブサイトで診療可能な病院を調べる「救急医療システム」は、全国的に存在している。一般に利用可能だが、ほとんどは、救急搬送時に患者を受け入れる態勢にあるかをリアルタイムで見られる仕組みは整っていない、と円城寺氏。佐賀県のシステムも「救急車で隊員が電話をかけまくる姿や、ある病院で他の病院の搬送状況を全くつかめていない様子を知った」ことが改良のきっかけになったと話す。

   「99さがネット」では、搬送情報の更新は救急隊員が行う。患者を病院に搬送し終えた時刻を、iPadを使って入力しておくのだ。ほかの隊員は最新の更新情報をもとに、患者が運ばれて間もない病院を避けて別を当たればよい。医療機関にとっても、各病院の救急患者の受け入れ人数が可視化されれば、相互の連携が取りやすくなる利点がある。

   新システムが稼働してから半年で、救急病院までの到着時間が1分短縮されたという。時間にすれば短いかもしれないが、命の行方を左右する状況のなかでの1分はとても貴重だ。佐賀県を皮切りに、岐阜県や奈良県、栃木県、群馬県などで緊急医療情報とiPadを組み合わせた試みが始まっている。

   救急搬送の円滑化は改善が進みつつある。だが円城寺氏は「これはあくまで対処療法にすぎません」。病院や専門医の減少が、緊急を要する患者の受け入れを難しくしている現状は変わっていないからだ。

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