2024年 4月 20日 (土)

「マイナンバー」はバラ色か? 16年から「顔写真付きカード」配布へ

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   国内居住者全員に番号を割り当て、年金などの社会保障給付と納税、さらに災害支援の分野など幅広く活用する共通番号(マイナンバー)の法律が国会で成立した。しかし、個人情報流出や国によるプライバシー侵害への国民の抵抗感は根強く、制度の円滑なスタートに向け、国民の理解を得る努力がまだまだ必要なようだ。

お役所の個人情報を番号カードで一元管理

   マイナンバー法に基づき、まず2015年10月に12ケタの個人番号の通知が始まる。そのうえで、税務署や市町村、日本年金機構などの行政機関がバラバラに管理している個人情報をネットワークでつなぎ、2016年1月から番号情報が入ったICチップを載せた顔写真付きの個人番号カードの希望者への配布を開始し、この時点から給付申請などの行政手続きが大幅に簡素化される。そして2017年1月には行政機関が個人番号を使って個人情報をやりとりするシステムが稼働、1つの番号での一元管理が完成する。

   制度の最大の利点は社会保障サービスの受給や納税手続きが簡便になることだ。児童手当の申請を例にとると、所得証明書や健康保険証のコピーをそろえて市町村の担当部署に申し込む現行制度に比べ、制度導入後は、個人番号カードを窓口で提示するだけでよくなる。役所が所得などの必要な情報を個人番号で簡単に照会できるからだ。

   行政の効率化も期待できる。現在、住民票や地方税、年金、社会福祉などに関する個人情報を国や自治体の各担当部署がバラバラの番号で管理しているため、社会保障給付などの際、役所同士でそれぞれが持つ個人情報を手作業で照合している。マイナンバーなら、国・自治体の各部門横断の共通番号で、パソコンを使って瞬時に情報を照合でき、労力を大幅に省ける。

   国民が自分の情報の使われ方をインターネットで確認できる自分専用の「マイポータル制度」もでき、税務署が記録している年収・生命保険・住宅ローン・扶養家族などの情報、証券取引の情報、年金・医療・介護などの社会保険料などを確認できるようにし、また、パソコン上で情報を取得し、確定申告などの手続きが添付書類なしでできるようにもなる。

   一方、制度導入時のマイナンバー利用は社会保障や税など行政分野に限定し、医療など他分野は施行後3年の2018年10月をメドに利用範囲の拡大を検討すると法律の付則で定めた。

プライバシーの面から強い抵抗感も

   例えば医療分野で、電子化したカルテをマイナンバーで管理すれば、どこの病院でも過去の治療歴を確認でき、検査や投薬の重複を避けられるなどのメリットが指摘される。東日本大震災のような場合、被災した病院でカルテが消失し、治療に遅れが出るといったことも、マイナンバーで過去の治療歴を把握できれば、避難先の別の病院でも適切に治療を受けられる。銀行口座などをマイナンバーで管理して名寄せできれば、利子所得などを正確に把握でき、脱税防止にもつながる。

   だが、マイナンバーはかつて「国民総背番号制度」と呼ばれたように、個人情報を行政が細かく把握するため、プライバシーの面から根強い抵抗感がある。さらに、情報漏洩への懸念から、市民団体などが反対している。医療などへの利用が先送りされたのも、そうした声に押されたからだ。

   現行の住民基本台帳ネットワークでも、住民票コードがネットに大量流出したり、他人になりすまして住基カードを取得し銀行口座を開設したりする不正行為が起きており、情報の範囲・量が格段の増えるマイナンバーでの被害は計り知れない。写真付きカードで本人確認を徹底するといっても、あくまでも窓口の話。給付金の振込先の変更手続きなどをネットで可能にすることも検討中といい、不正アクセスによる「なりすまし」はもちろん、例えばパソコンを高齢者の家に持ち込んで、言葉巧みに番号カードを借りてログインし、給付金の口座を付け替えるといった犯罪も想定されることが、国会審議の中でも指摘された。

米国では「本人確認番号」などの導入も

   制度導入済みの他国でも、例えば社会保障番号(SSN)が共通番号となっている米国では、番号が盗まれてローンを組まれるなどの被害が年間数十万件に達し、内国歳入庁(国税庁に相当)や国防総省は、共通番号と異なる「身元保護個人納税者番号」や「本人確認番号」等を導入し始めている。英国では制度導入を決めたが、廃止されているといい、「共通の番号を見直すのが世界の流れ」(市民団体)との指摘もある。

   こうした懸念に対し、情報管理体制を監視する独立性の高い第三者機関「特定個人情報保護委員会」を設け、外部に情報を漏らした者に最高で4年以下の懲役または200万円以下の罰金を科すことも、法律には盛り込まれた。それでも、委員会の事務局は数十人規模でのスタートになるといい、全国で不正を監視するのは難しい。振り込め詐欺など高齢者を狙った犯罪が後を絶たない中、被害を未然に防げるかは防止できるかは未知数だ。

   市民団体の関係者の間では「マイナンバーで個人情報を行政が一元的に握り、犯罪防止・捜査のためとして監視カメラを日本中に設置すれば、絵に描いたような監視社会の出来上がり」というブラックジョークもささやかれている。

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