2024年 4月 19日 (金)

富士山「世界遺産」登録で「入山規制」 「観光客減につながる」と地元は反対?

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   富士山の世界文化遺産登録に、世間はすっかりお祭り騒ぎ。早くも観光客が殺到する地元では、経済効果に大きな期待がかかる。

   一方で行政側は、自然保護の観点から「入山料」など観光客抑制策を急ピッチで進めている。世界遺産登録の快挙も「喜んでばかりもいられない」というのが本音のようだ。

三保松原など「構成資産」にも観光客殺到

「世界文化遺産」登録が決まった富士山。今後の課題は…?
「世界文化遺産」登録が決まった富士山。今後の課題は…?

   「例年の3倍」――世界遺産登録が決まった翌2013年6月23日、富士山の「五合目」に大勢の観光客が押し寄せ、地元関係者は目を見張ったという。山開き前にもかかわらず、500台分の駐車場が埋め尽くされるほどの盛況ぶりだ。

   世界遺産登録に前後して、富士山、そして周囲の関連スポットには、気の早い観光客がどっと詰め掛けている。一時は世界遺産入りが危ぶまれながらも、無事「滑り込み」を果たした三保の松原にも23日、「尋常ではない」「GW並み」と住民が目を丸くするほどの人出が。富士宮市が市民向けに実施している、浅間大社など富士山の関連スポットを回る「構成資産めぐり」も、

「21日に7月分の募集を開始したのですが、わずか30分で満員になってしまいました」(市の担当者)

というほどの人気を呼んでいる。

   2012年夏、富士山には31.9万人もの登山者があった(環境省調べ)。周辺観光も含めれば、年間2000万人が訪れているというが、特に登山者は、世界遺産登録で1.5倍近くに増えるともいわれる。

成田空港から富士山まで「電車一本」構想

   となると、やはり気になるのが経済効果だ。世界遺産登録が確実になった5月以降、すでに地元観光業界は活況にわいている。たとえば静岡市の「駿河湾フェリー」は、5月の乗用車積載数が対前年比167%という「近年にない大幅増加」(環駿河湾観光交流活性化協議会)。6月以降はさらなる乗客増も、とそろばんを弾く。

   みやげ物業界の動きも急だ。24日には早くも、「世界遺産」の4文字を大々的にプリントした「富士山限定焼」(ショウエイ)などの製品が、富士山周辺の駅やSAなどで販売を開始した。地元商店街も、相次いでこうした富士山グッズを店先に並べ、「特需」獲得を目指す。

   この波に乗り、富士山に「登山鉄道」を作ろう、という話まで持ち上がっている。富士急行(山梨県)が構想しているもので、現在の富士急行線を富士山五合目まで延伸する、というプランだ。実現すれば、成田空港から富士山まで「電車一本」で行けることになる。

「入山料7000円」プランも浮上?

   一方、山梨県の横内正明知事、静岡県の川勝平太知事は登録直後、まるでこの流れに水を差すように富士山に「入山規制」を設ける考えを相次いで明らかにした。

   富士山では登山客の増加に伴うゴミ問題などが深刻化しており、特に自身富士山清掃に携わっているアルピニストの野口健さんは、観光客増加による環境破壊を危惧し、富士山の世界遺産登録に「時期尚早」を唱える。この問題はユネスコの諮問機関・イコモスも懸念しており、なんらかの対策を取ることを求めている。

   そのため、両県ではこの夏から試験的に「入山料」1000円を徴収し、観光客の増加を抑制する予定だ。もっとも京都大学の栗山浩一教授らによれば、1000円程度では訪問者は4%しか減らず、世界遺産効果による増加を見越すと「少なくとも1人あたり7000円の入山料が必要」だという。そのため両知事は、ともに「入山人数制限」など、大掛かりな対策に言及している。

   しかし観光客減につながる入山規制策は、地元からの反対が根強い。2011年に入山料制度が提起された際にも、いったんは廃案を余儀なくされた。今夏からの試験的導入に際しても、積極派の静岡と消極派の山梨で議論が分かれている。

   富士山は7月1日、「山開き」を迎える。

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