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「飛ばないボール」のオールスター戦 盛り上げた大谷こそがMVPだ!

   今年のオールスター戦は3試合を行ったが、ファンが期待したホームランはゼロ。これは60年ぶりの珍事だった。この地味なシリーズを救ったのは日本ハムのルーキー大谷翔平。投打二刀流で盛り上げた。

「投高打低」過ぎて盛り上がらない球宴

   2013年7月22日の第3戦(福島県いわき)も投手力が上回り、セもパも打線は沈黙。最初の得点はセが5回表にあげた1点で、静かに終盤に入った。8回裏、パが大谷のタイムリーで同点に追いつき、それに乗じて3点を取り逆転勝ち。

   盛り上がったのは大谷の場面だけというさみしいものだった。大谷は途中出場で、8回は一死三塁の場面で回ってきた。内角球に詰まりながらも二塁手の左を渋く抜いた。打席に立ったときスタンドは湧いたが、安打を放ったところでさらに歓声は大きくなった。

   大谷の一打がなかったらブーイングものの試合展開だった。ソフトバンクの内川がその後に勝ち越し打を放ってMVPを持っていった。大谷は敢闘選手賞に選ばれたが、展開から見て大谷にMVPを与えてもよかった。ファンの期待に応えるというスター選手の役目を果たした点を見逃してはならない。

   珍しいほどの投高打低だった。第1戦(札幌)は1-1の引き分け。第2戦(神宮)はセの3-1。第3戦でパが雪辱という結果だったが、3試合で両軍が上げた得点は54イニングで計10点。本塁打なしは1953年以来2度目というから驚く。

   「在庫の飛ばないボールを使ったのか」と皮肉を言いたくなるような貧打だった。いまプロ野球は、内緒で飛ぶボールにすり替えた問題で悩んでいる真っ最中。オールスター戦では昨年の飛ばないボールにすり替えたのかと言いたくなったほどだ。なにしろ第1戦の前に行われたホームラン競争の決勝では、DeNAのブランコが1本打っただけで優勝。なぜかといえば日本ハムの中田がゼロだったから。

   ほんとうに大谷がいなかったら「入場料を返せ」の内容だった。大谷は第1戦で投手として登場、1イニングだったが、打者5人に対し、13球すべて150km/h台のストレートを投げた。2三振のうち横浜中村への2球目には157km/hを出し、電光掲示板にその数字が表示されると球場全体にどよめきが起きた。

試合の「盛り上がり」でMVP決めてもいいのでは?

   引き分けの第1戦は巨人の沢村がMVP。ここも勝負無しなら投手のあと外野を守った大谷を表彰してもよかった。走者二塁の場面で、左翼手として飛球を捕ったあと、ノーステップで二塁へ投げて併殺を狙ったプレーは、放映したテレビの解説者が絶賛したものだった。ピッチングと合わせて十分MVPに値した。

   大リーグのオールスター戦ではヤンキースの抑えリベラが1イニングを3者凡打だけでMVPに選ばれた。「今季限りで引退」を表明していることから、外野のブルペンからマウンドに向かったときはファンがスタンディングオベーションで迎え、大いに盛り上がった。そういう状況を見て表彰を決めるところはさすがである。残念ながら日本のプロ野球にはそういったプロの考え方が欠如している。大谷の存在が本塁打ゼロの批判を消し去ったといっていいだろう。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)