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北朝鮮とキューバの親密な長い歴史 「カラシニコフ銃10万丁受け取る」カストロ明かす

   キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が国営メディアに寄稿したコラムで、1980年代に北朝鮮から大量の武器の無償供与を受けていたことを明らかにした。2013年7月には、キューバを出港した北朝鮮船籍の貨物船から未申告の武器が大量に見つかり、国連安全保障理事会の北朝鮮への制裁決議に違反するとして問題化したばかり。

   めったに動向が明らかにならないカストロ氏がこのような発言をすることで、両国の古くからの親密な関係を改めて印象付けている。

たびたび死亡説や重体説がささやかれてきた

フィデル・カストロ氏がキューバ共産党機関紙「グランマ」に寄稿したコラム。故・金日成主席を称賛している
フィデル・カストロ氏がキューバ共産党機関紙「グランマ」に寄稿したコラム。故・金日成主席を称賛している

   カストロ氏は06年に病気療養を理由に国家評議会議長の職を暫定的に弟のラウル氏に譲り、08年に正式に引退。たびたび死亡説や重体説がささやかれてきたが、院政を敷いているとの見方もある。

   カストロ氏は2013年8月13日付けでキューバ共産党の機関紙「グランマ」に「客観的な真理と夢」と題して寄稿し、自らの政治家人生を振り返った。内容はソ連や米国との関係、ベネズエラのチャベス大統領の死去にあたっての所感など多岐にわたる、東アジア関連では北朝鮮に関する記述が際立つ。

   冷戦中の1982年にソ連のレオニード・ブレジネフ書記長が死去し、後継にはユーリ・アンドロポフ書記長が就任した。カストロ氏は、当時のアンドロポフ氏とのやり取りを、こう振り返った。

「彼は我々に、もしキューバが米国から攻撃を受けたとしても、自力で戦わなければならないと伝えてきた」

ソ連からの三行半は「最小限の同志にしか知らされなかった」

   三行半を突きつけられたに近いと言えるが、このことは極秘にされた。

「敵に知られると非常に危険なので、このことは最小限の同志にしか知らされなかった」

   ここで助け船を出したのが北朝鮮で、カストロ氏は

「別の友人に対して、キューバ兵100万人を出動させるのに必要な武器の提供を依頼することにした。経験豊かで非の打ちどころがない戦闘員の金日成同志は、1セントも要求することなく、AKライフル(カラシニコフ)10万丁と、附随する弾薬を送ってきた」

と説明。故・金日成主席を「同志」という言葉を使って称賛した。

   キューバと北朝鮮との関係をめぐっては、13年7月にパナマ運河を航行中の北朝鮮船籍の貨物船が拿捕され、積み荷に地対空ミサイルシステム2セット、分解されたロケット9基、ミグ21型機2機などの武器が発見されたばかり。この問題でも、キューバの北朝鮮に対する配慮がうかがえる。キューバ政府は、「旧式の武器を修理するために北朝鮮に運んでいた」と説明し、カストロ氏は13年7月のキューバ革命60周年を記念してラテンアメリカ各国の大統領に送った書簡の中で、拿捕について「革命を中傷するための試みだ」と非難している。

休戦協定破棄の宣言は「キューバ危機以来の『最も深刻な核戦争の危機のひとつ』」

   今回の件に限らず、カストロ氏は北朝鮮に恩義を感じているようだ。

   2013年3月には、北朝鮮が米韓軍事演習に反発して朝鮮戦争の休戦協定を一方的に破棄すると宣言、朝鮮半島内の緊張が高まった。これを受ける形で、カストロ氏は4月4日付けで「朝鮮半島での戦争を避ける義務」と題して前出の「グランマ」に寄稿している。

   その中で、朝鮮半島の状態は1962年のキューバ危機以来の「最も深刻な核戦争の危機のひとつ」だと警告。朝鮮戦争で多数の死者が出たことにも言及した。その中で、金日成主席と会談した時のことを回想しながら、「歴史上の人物。とりわけ勇敢で革命的」と絶賛。

「朝鮮民主主義人民共和国は常にキューバと友好関係にあったし、同様にキューバは、これまでも、これからも同国とともにあり続ける」

と北朝鮮支持を鮮明にした上で、

「戦争を避ける義務もオバマ大統領と米国国民のものだ」

と朝鮮半島で緊張が高まっている責任は全面的に米国側にあると主張している。

   なお、この文章では「北朝鮮」という略称は使われていない上、「大韓民国」「韓国」「南朝鮮」といった朝鮮半島の南半分を指す言葉も登場せず、事実上無視しているとも言える。

   ちなみにキューバと韓国は外交関係を結んでいない。

   両国関係は現在も「相思相愛」といってもおかしくなく、金正恩第1書記は2013年7月26日、フィデル・カストロ氏の弟のラウル・カストロ氏に、

「わたしは、尊敬するフィデル・カストロ同志の指揮のもとで親米的な軍事独裁政権に反対する武装闘争の序幕を開いた英雄的なモンカダ兵舎襲撃60周年に際し、貴方とキューバ共産党とキューバ共和国政府と人民に熱烈な祝賀と戦闘的あいさつを送る」

という内容の祝電を送っている。