2024年 4月 26日 (金)

官房長官が前内閣法制局長官発言に不快感 集団的自衛権「解釈改憲」に向けて動き急

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   安倍晋三首相が2013年8月21日に夏休みから公務に復帰し、「安倍カラー」が強まるのは確実だ。周辺諸国は、この安倍カラーを「右傾化が加速する」と警戒しており、そのうちのひとつが集団的自衛権の行使容認に向けた動きだ。安倍政権は、これを従来の憲法解釈を変更することで実現しようとしている。

   このことを批判するともとれる発言をした前内閣法制局長官に対して政府が露骨に不快感を示すなど、早くもこの是非をめぐる攻防が始まっている。

歴代政権は「持っているが、憲法9条との関係上行使できない」という立場を踏襲

安倍政権の集団自衛権行使容認に向けた動きが活発化している
安倍政権の集団自衛権行使容認に向けた動きが活発化している

   集団的自衛権とは、日本が他国から攻撃を受けていない場合でも、米国が攻撃を受けた場合は日本への攻撃とみなして反撃できる権利。歴代政権は「持っているが、憲法9条との関係上行使できない」という立場を踏襲しており、防衛省のウェブサイトでも、

「わが国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然です。しかしながら、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています」

と説明されている。

   安倍首相は、以前からこの憲法解釈を変更することで集団的自衛権を行使できるようにしたいとの考えで、第1次内閣では首相の私的懇談会として設けられた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、憲法解釈を変更すべきだとの報告書をまとめた。ただし、報告書がまとまった2008年時点では、すでに安倍1次内閣は退陣しており、それ以上具体的な検討が進むことはなかった。

   第2次安倍内閣が本格始動して、この懇談会も再スタート。13年2月8日には初回の会合が開かれ、2回目の会合は9月にも行われるとみられる。北岡伸一座長代理は8月13日のTBSのインタビューで、

「今の内閣法制局の集団的自衛権についての考え方は間違っていると思っている」

と述べ、やはり見直しに前向きだ。

最高裁判例出るまでは憲法解釈は内閣の役割

   これまでの政府見解を支えてきたのが内閣法制局だ。安倍内閣は、解釈見直しに積極的だとされる前フランス大使の小松一郎氏を長官に起用し、見直しの動きを後押しする。

   これに反発しているのが小松氏の前任者で、最高裁判事に就任したばかりの山本庸幸氏。山本氏は8月20日の会見で、憲法解釈の見直しについて「難しい」と述べ、集団的自衛権を実現するためには「憲法改正をした方が適切だ」と見解を示した。

   この発言に対して、政府は異例の反応を示した。菅義偉官房長官は8月21日の会見で、

「(山本氏は)内閣法制局のトップを務めて、まさに合憲性の最終判断を行う最高裁の判事だから、公の場で憲法改正の必要性まで言及したことについては、私は非常に違和感を感じている」

と批判。また、

「憲法解釈というのは、具体的に提起された事件に関しては、最高裁の判例を通じて最終的に確定するが、最高裁の判例で確定するまでの間に、政府として憲法解釈を行う必要がある場合は、内閣を補佐する機関である内閣法制局の専門的知見を活用しながら第一義的には内閣が行う」

と述べ、最高裁の判例が出るまでは憲法解釈は内閣の役割だとの見解を示した。

小野寺防衛相、今の憲法解釈では米軍にかわって反撃は「かなり難しい」

   憲法解釈の変更で、最初に直接の影響を受けるのが自衛隊や防衛省だ。「当事者」に近い小野寺五典防衛相も、解釈の変更を望むひとりだ。小野寺氏は8月17日朝に放送されたTBSの「みのもんたのサタデーずばっと」に出演し、日本の防衛のために公海上に展開している米国のイージス艦を例にとりながら、

「日本が攻撃される前に、この艦船に攻撃があった場合、このときに(自衛隊に対して反撃の)命令を下す立場は私。総理と相談してすることになる。私の判断の中で、じゃあ、そういう場合に本当に、今の憲法の解釈上、個別的自衛権の中だけでこれができるかというと、かなり難しい」

と、環境整備を求めた。

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