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ランナーの「サイン盗み」はいけないのか 花巻東の疑惑巡りネットで論議に

   花巻東高校(岩手)が対戦チームの捕手のサインや動きを打者に知らせる「サイン盗み」をしていた疑いを主審に指摘され、ネット上でその真偽を巡って議論になっている。

   身長156センチと小柄ながら驚異の粘りで出塁率が8割にもなった花巻東・千葉翔太外野手(3年)は、2013年8月19日の準々決勝・鳴門(徳島)戦でもその持ち味を生かそうとした。

千葉翔太選手が2塁で左右に手を振り

   嫌なボールをファウルするカット打法が冴え、この日は1安打4四球とすべて出塁した。相手投手に対し、全投球163のうち、1人で4分の1に当たる41球を投げさせたほどだ。

   「サイン盗み」の疑いは、千葉選手が8回表にトップバッターで出塁し、2アウト2塁の場面で持ち上がった。

   テレビ中継を見ると、5番打者の多々野将太三塁手(3年)が打席に入ると、千葉選手が2塁付近で両手を右や左に振っている様子が分かる。相手捕手が初球で内角にミットを構えると、その方向に当たる左に手を振っていた。多々野選手はこれをファウルにしたが、2球目にボール球が来たときだ。主審が試合を中断して、2塁方向に向かい、何か指示するような仕草を見せた。千葉選手が「サイン盗み」のような紛らわしい行為をしているという注意だった。

   サイン盗みは、罰則はないものの、日本高野連の規則で禁止されている。高野連の事務局によると、これが横行してフェアプレーの精神に反するようになったことや、盗みを防ごうとサインが複雑になって試合進行が遅れたことなどから、1998年に規則ができた。

   報道によると、鳴門側は、サイン盗みをしていたと捕手が主審に伝えていたという。内角を攻めようとしたら、打者が後ろに下がったのも見たとした。一部では、花巻東はこれまでも同様な行為をしていた疑いがあるとも報じられている。

   これに対し、花巻東側は、サイン盗みを否定したようだ。

「ルール自体が土台無理があるよな」

   花巻東の千葉翔太選手は、主審に注意されたことに対し、「よく分からなかった」と報道陣に話したといい、佐々木洋監督も「わざわざズボンを触って、手でサインを出すなんてことはないです」と説明した。ただ、報道では、左右に手を振る仕草についてのコメントは見られなかった。

   花巻東がサイン盗みを否定しており、白黒がはっきりしないため、高野連は処分しない方針を示した。ただ、また注意するようなことがあれば、没収試合もありうるとしている。

   ネット上では、サイン盗みについて、意見が分かれている。

   「やり方次第ではいくらでも出来る」「ルール自体が土台無理があるよな」などと花巻東に同情的な声がある一方で、「不正はいかんな」「出場停止相当だろう」という厳しい意見も出ていた。花巻東が2013年8月21日の準決勝で敗退すると、それまでの勝ちぶりを揶揄する書き込みまであった。

   高校野球に詳しいスポーツジャーナリストの菅谷齊さんは、花巻東がサイン盗みをしたことには否定的だ。

「今はどこの学校も教育してやらせないようにしており、考えにくいと思います。意識的に相手を惑わす、花巻東の陽動作戦だったのでは。それも、千葉選手が考えて、本人の判断でやったのではないでしょうか。ああいうタイプの体が小さい選手は、レギュラーを獲るために、あらゆることをやります。それについての好き嫌いは別にして、考えてやっていることではないですか」

   菅谷さんは、高野連の規則についても懐疑的だ。

「サインを見抜くことも、才能の1つですよ。今は投手がサインを出すこともあり、いろいろなことをやっています。そんな中で、こんなあいまいな規則を作る方がどうかしていると思いますね」