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DM、メール、電話、チラシ… 金融機関の熾烈な「NISA」口座獲得競争

   金融機関の少額投資非課税制度、通称「NISA」の口座獲得競争が過熱している。

   テレビを付ければ大手証券会社やメガバンクのCMが流れているし、新聞や雑誌の広告に折込チラシ、電話やダイレクトメール、インターネット専業証券などからは毎日のようにメールが届く。あれやこれやの勧誘で、いい加減うんざりしている人も少なくないはずだ。

1000円、2000円、「大盤振る舞い」の口座開設キャンペーン

   NISAが導入されるのは、2014年1月。現在は株式や株式投資信託から得られる収益には10.147%(復興特別所得税、住民税を含む)の軽減税率が適用されているが、これが2013年12月末で廃止され、14年1月には20.315%に戻る。NISAはそれに伴う、新たな証券優遇税制としてスタートすることになる。

金融機関は「NISA」の口座獲得に懸命だ!(写真は、野村証券のホームページ)
金融機関は「NISA」の口座獲得に懸命だ!(写真は、野村証券のホームページ)

   NISAは年間100万円の元本金額を上限に、現物株式や株式投信の配当と譲渡益が非課税扱いになる制度。利用できる人は、14年1月1日に20歳以上の居住者。非課税で投資できる期間は原則5年で、最大500万円まで非課税になる。

   半面、デメリットもある。株式投資や外国為替証拠金取引、デリバティブ取引などは1年間の損益を通算して計算できる。たとえば、株式の配当や譲渡益が大きくても、FXで大きく損失した場合、利益と損失が相殺できるので、税金は少なくて済む。

   しかし、NISAはこうした「損益通算」ができない。

   また、現在保有している株式などは非課税の対象外だし、NISA口座を利用して投資した商品を1度売却してしまうと、その資金で再投資しても非課税にならない。

   とはいえ、「NISA」の文字を目にしない日がない。NISA口座は1人1金融機関に限られているので、金融機関は口座を獲得できれば、そのお客を囲い込めるメリットがある。

   口座はあるものの、預金やMRF(マネー・リザーブ・ファンド)で資金を寝かせているだけの「休眠口座」に刺激を与えることもできる。株式市況が明るくなってきた中で、NISAでの取引を超えた分(課税口座)での取引を増やすことも期待できるからだ。

   そのため、どの金融機関もメディアでの宣伝広告を含め、大々的な口座獲得キャンペーンを展開。QUOカード500円分にはじまり、1000円、2000円プレゼントと、大盤振る舞い状態だ。

   NISAで儲かりそうなのは、多くの口座を獲得できそうな金融機関と、広告の出稿が増えたメディアなのかもしれない。

NISA口座の開設、最低4年間は金融機関の変更はできない

   そんな華やかな口座開設キャンペーンが繰り広げられているなか、「落とし穴」もある。

   現在、各金融機関が展開しているキャンペーンは、いわば、「仮予約」のようなもの。NISA口座の「開設申請受付」がはじまるのは2013年10月1日。「いま、お客様からいただいているのは申込書です。それを10月1日に、金融機関から税務署に申請します。そこで一人が複数口座を申請してきた場合、申請を戻されるか、あるいは税務署のほうで(金融機関を)決めてしまうこともあるようです」(大手証券のコールセンター)と説明する。

   一たんNISA口座を開設すると、最低4年間は金融機関の変更ができない。

   「たとえば、投資信託は各金融機関で取り扱っている商品も違いますし、取引手数料も違います。NISA口座の使い勝手も金融機関によって異なります」と説明。金融機関の選択を誤ったばかりに、買いたい商品を買えない可能性があるわけだ。

   ところが、じつは金融機関によっては、まだ商品ラインナップがはっきりしないところがあるという。金融機関に急かされて申込書を送ってしまった人はもう一度確認したほうが賢明だ。

   ちなみに、複数の金融機関に申込書を出してしまった場合の取り消しは、「9月中旬までなら応じてくれるはず」という。