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「おしん」を超えるか「半沢直樹」 台湾、香港でブーム、アジア全域に

   2013年の国内テレビドラマで最大のヒット作となった「半沢直樹」(TBS系)が、海を渡って香港、台湾でもブームを巻き起こしている。勢いに乗ってアジア全般にまで広がりそうだ。

   海外で有名な日本のドラマといえば、1980年代に放送されたNHK連続テレビ小説「おしん」だ。それから30年がたち、今度は日本のサラリーマン社会を描いた作品が世界への足がかりをつかみかけている。

ニュースで土下座の文化、終身雇用制崩壊が解説される

配役が香港の俳優陣になっている
配役が香港の俳優陣になっている
「台湾では『半沢直樹』、人気ありますよ。複数の同僚が、よく見ていると言っていました」

   J-CASTニュースの取材にこう答えたのは、台北の企業に勤務する日本人男性だ。まずインターネット上で映像が出回り、その後ケーブルテレビで中国語の字幕付きで放送され始めたという。

   ニュース番組でも特集された。「土下座の文化の解説や、バブル崩壊後に終身雇用が崩れつつあるといった内容でした」。さらに日本で大ヒットした様子や、関連グッズの売れ行きが好調な点も紹介されたそうだ。

   台湾の視聴者は、どこに魅力を感じているのだろうか。男性にたずねると「台湾の会社員にとって『こうあってほしい』と思っていることを、半沢が実現してくれたことに共感したのではないでしょうか」と話す。

   台湾の企業社会では、たとえ正しい意見や行為だとしても、部下が上司に対して自分の意思を貫くのは難しい。無理だと分かればさっさと転職する。だが半沢は、言わば会社内の分厚い壁を自らの手で崩した。その行動力に喝采を送っているようだ。

   ブームは香港でも起きている。現地の新聞のなかには、紙面を割いて「半沢直樹特集」を組むところも出た。インターネット上でも、ファン同士で熱い議論が交わされている。香港の大衆紙「蘋果日報(アップルデイリー)」は2013年9月20日付の記事で、香港でリメーク版がつくられるとしたら誰が適役か、ファンがアイデアを出し合っている様子を報じた。

   記事には1枚の画像が掲載されている。一見すると、TBSのドラマ公式サイトのデザインそっくりだ。ところがそこには、主演の堺雅人さんや妻役の上戸彩さんらの姿はなく、全員が香港の俳優に置き換わっている。現地ファンが選んだ「香港版」の配役だ。名ゼリフ「十倍返し」を意味する「十倍奉還」の文字まで加えられ、まるで本当にリメーク版が制作されているかのようだ。

日本ドラマのリメーク版が盛んな韓国

   香港や台湾での人気ぶりに、TBSは韓国や東南アジア、欧州にも売り込みをかける構えだと、2013年10月3日付の朝日新聞が報じた。ほかの国でも、知名度はアップしているだろうか。

   韓国・ソウル近郊に勤務する韓国人女性に電話取材すると、現地では「半沢現象」は起きていないようだ。この女性は「日本の知人から教えてもらって見始め、すっかりファンになったと話す。一方で友人や職場の同僚が同じように見ているとは聞いていない。ただネット上では、日本のドラマ好きユーザーの間で話題になっているという。

   韓国では日本ドラマのリメーク版が盛んだ。最近では「家政婦のミタ」(日本テレビ系)が「怪しい家政婦」のタイトルで放送されており、比較的高い視聴率をキープしている。日韓では社会背景など違いがあるが、歴史物と比べて現代を舞台にした内容なら類似点もあり理解しやすいことから、「ドラマコンテンツを日本から『直輸入』してそのまま流すより、多少アレンジを加えた方が受け入れられやすいかもしれません」とこの女性は話す。

   海外で日本ドラマの代名詞といえば、今も「おしん」だ。日本の周辺諸国にとどまらず、カザフスタンやウズベキスタンといった中央アジア諸国、さらにはイランをはじめ中東にまでその名はとどろいている。「半沢直樹」が今後、「おしん」のように国際的な知名度を得るまでになるかが見ものだ。