2024年 4月 19日 (金)

深刻化する日本財政に新たな難問 インフラ更新費、10年後に現状の4割増 

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   道路や港湾、空港などインフラ(社会資本)の維持管理・更新に必要な費用が10年後の2023年度には年間で最大約5兆1000億円に上る見通しであることが、国土交通省が行った推計で明らかになった。

   2013年度の維持管理・更新費は3兆6000億円で、約4割増に拡大する見込みだ。インフラの老朽化は社会的に関心が高まっているが、対策の進め方については慎重な検討が必要だ。

笹子トンネルの天井板崩落事故を機に注目

高速道路の老朽化が進む(写真はイメージ)
高速道路の老朽化が進む(写真はイメージ)

   推計は国交省の審議会がまとめた答申に盛り込まれた。国や地方公共団体などが管理する道路や下水道、公営住宅、官庁施設など10分野を対象に、過去の維持管理・更新実績などを踏まえ、将来必要とされる費用を算出した。

   それによると、10年後の維持管理・更新費は年間4兆3000億~5兆1000億円にのぼる。さらに20年後の2033年度には、4兆6000億~5兆5000億円に膨らむとしている。

   インフラの老朽化については、約1年前の2012年12月に起こった中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故を機に広く注目を集めた。日本の道路や橋などは高度経済成長期の1960年代に集中して作られた。このため、今後、一斉に老朽化が進むとみられており、国交省によれば、全国の道路橋(15メートル以上)のうち、建設後50年以上経過したものは2011年度では約9%だが、10年後には約28%、20年後は約53%とされる。笹子トンネル事故のような多数の人命にかかわる重大なトラブルを未然に防ぎ、安全確保に備えるためには老朽化対策は欠かせないとの要望が増えている。

施設の長寿命化への取り組みも必要

   ただ、社会保障費が膨らみ、国や地方自治体がそろって厳しい財源問題に直面する中、10年後に現状の4割増というインフラの維持管理・更新費負担に耐えられるかは見通せない。実際に必要な費用が5兆円台としたら、現状の公共事業費にも匹敵する規模であり、現実性の乏しい支出であるともみえる。

   審議会の答申では「必要となる予算の確保に十分な政策的対応を図るべきだ」などとし、老朽化対策には財源面で万全を期すよう求めた。一方で、施設の長寿命化への取り組みなどを進めることも必要だと指摘。さらに、「今後の都市、地域の構造の変化に対応して施設の必要性自体を再検討するなど、効率的・効果的な維持管理・更新を図るべきである」などとして、さまざまな見直し作業を求めている。

   インフラの老朽化対策という名目で、無駄な公共事業の復活につながってはならないという指摘が強まっている。国交省を中心に、維持管理・更新の対象となる施設の選別や施設の長寿命化を進めるための技術開発など、財源確保以外のさまざまな対策を進めなければ、今後の本格的な老朽化時代には対応できない。

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