J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

LINEが「ソフトバンク買収説」を完全否定 新サービスで独自にグローバル拡大図る

   無料通話・メッセージアプリサービスのLINEに買収報道が流れた。携帯電話大手のソフトバンクから買収提案を受けたと米ブルームバーグが伝えたのだ。

   騒動のさなか、LINEは新サービス発表会を開催し、出澤剛・最高執行責任者(COO)は報道を全面否定した。同業の海外のサービス大手が相次いで買収されているが、LINEは世界市場において独力で勝負を挑む。

ライバル業者の相次ぐ買収「チャンスも生まれる」

LINEの出澤剛COO(右から2人目)と舛田淳CSMO(同3人目)
LINEの出澤剛COO(右から2人目)と舛田淳CSMO(同3人目)
「率直に、ソフトバンクからLINEを買いたいという話はありますか」

   報道陣からこう問われた出澤COOは、苦笑いしながら「ないです。ありません」と即答した。2014年2月26日に開かれた新サービス発表の席でのことだ。前日、ブルームバーグが「事情に詳しい複数の関係者」の話として伝えた内容を一蹴したのだ。

   LINEの利用者数は、2011年6月のサービス開始以来3億7000万人に達した。2014年内には5億人到達を見込む。全体の85%が海外ユーザーなのも特徴で、グローバル化が進んでいる。ただ、メッセンジャーサービスの競争は激しさを増している。

   交流サイト世界最大手のフェイスブックは2月19日、利用者4億5000万人を抱える「ワッツアップ」を190億ドル(約1兆9000億円)で買収すると発表。米CNN電子版は、「国連の人道援助予算1年分」「ウクライナの借金を肩代わりできる額」に匹敵すると驚きをもって伝えた。

   これに先駆けて楽天も2月14日、3億人の利用者を持つメッセンジャーアプリ「バイバー」を9億ドル(約900億円)で買収すると明らかにした。バイバーとワッツアップはいずれも、今後独立したサービスとして事業を続ける。LINEにとっては、ライバルの2社に強力な「親会社」が登場したと言える。

   出澤COOは、同業他社の買収が相次いだことに「こういうときは業界が動き、チャンスも生まれる。実際にフェイスブックによるワッツアップ買収が報じられると、LINEの欧米ユーザー数が急増した」と説明し、歓迎すべき状況だと語った。

   最高戦略・マーケティング責任者(CSMO)の舛田淳氏は、「(ライバルとの)差別化をベースにものづくりをすると、独りよがりになってしまう」と言う。競合相手が視線の先にあるのではなく、あくまで利用者の立場で開発に取り組む姿勢を強調した。その一方で、ゲームや「スタンプ」の課金、法人向け事業など異なるサービスを組み合わせて収益構造をつくりあげたLINEが、「世界で最も進んだビジネスモデルをもったメッセンジャーアプリだと思う」と自信をのぞかせた。

LINEから携帯や固定電話にも音声通話が可能に

   とは言え、世界レベルで競争が激しくなっているのは間違いなく、だからこそLINEは今回、グローバル市場で勝ち抜くために3種類の新サービスを用意した。1つ目は、メッセンジャー機能でやり取りできる「スタンプ」と呼ばれるイラストの制作を、外部にも開放した点だ。これまではLINE内部でつくられていたが、ユーザーが自作し、LINEが新設するウェブストアで販売可能とする。

   2つ目は、企業がLINE上に開設している「公式アカウント」が対象だ。従来は企業側から複数ユーザーに一律の情報しか提供できなかったが、これを各ユーザーの事情に合わせて最適化した内容を送れる仕組みに変える。ユーザーが同意すれば、企業の顧客データベースや業務システムと連携させて、利便性を向上させることが可能。例えば宅配ピザ業者とユーザーとの間で、LINEの「ピザ」のスタンプを業者に送っただけで注文できたり、アルバイトのシフト管理に活用して急に人手が必要になった際にLINEを通じて連絡したりといった使い方ができるようになりそうだ。

   そして3つ目が「LINE電話」。これまでLINEユーザー間でのみ可能だった音声通話を、固定・携帯電話にも発信できるようにする。料金は、サービス購入から30日間有効のプランは固定、携帯とも1分間6.5円で、固定電話向けのみのサービスを選ぶと同2円となる。一方、利用のたびに料金をチャージしておく場合は固定向けが同3円、携帯向けが同14円となる。

   舛田CSMOは、「ユーザーから上がってきた声をもとに3つの新サービスをつくった」と話す。これまでもアプリや一部スタンプは無料で提供されてきたが、その先には「収益が描けると見越している」との説明だ。

   競合他社がひしめく中、新サービスをてこに、「うわさ」でとどまっている株式上場にこぎつけるか、「まさか」の展開で他社による買収というどんでん返しが起こり得るのか。いずれにしろ、LINEがこれまで同様のスピードで世界を相手に成長を続けられるかは、舛田CSMOの言葉を借りれば「我々の腕のみせどころ」といったところだ。