2024年 4月 23日 (火)

電力小売り全面自由化に向け 商社、通信などの新規参入が活発化

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   2016年の電力小売り全面自由化に向け、新規参入が活発になっている。

   大手電力会社による地域独占となっている一般家庭など向け電力小売りが自由化されれば、利用者は他地域の電力会社や新規参入組を含めて料金やサービスを比較して購入先を選べるようになる。家庭向けの7.5兆円市場をにらみ、通信や商社などの参入で、早くも乱戦模様だ。

現状では全販売量の60%が自由化

「小売り」自由化で選択肢増える(画像はイメージ)
「小売り」自由化で選択肢増える(画像はイメージ)

   電力の小売り自由化は2000年から大工場やオフィスビルなど大口需要家向けから始まり、中規模工場やスーパーなどにも拡大され、現状では全販売量の60%が自由化されている。その総仕上げが家庭や小規模商店などを含む全面自由化で、政府は2014年2月末に電気事業法改正案を閣議決定し、開会中の通常国会に提出、会期内の成立を目指す。2016年に小売りを全面自由化した後、2018~2020年をめどに電力会社の発電部門と送電部門を分離し、小売りの料金規制も撤廃して電力システム改革は完成する。

   このうち、発電・送電分離は、適正な競争条件を整える大きなポイントになる。既存の大手電力会社は発電と送電を握る既存の大手電力会社に対し、送電部門を持たない新規参入業者は送電線の利用料が割高との不満が強い。発・送電分離は、大手と新規事業者の対等な料金競争の基盤になる。新規参入が盛んなのは、こうした条件整備が背景にある。

新電力は1年で約200社へと、2倍以上に

   具体的な動きは、2016年を待たず、早くも活発。2013年3月末に約80社だった新電力は1年で約200社へと、2倍以上に急増している。システム開発などを考えると今のうちから参入準備を進めないと間に合わないからで、すでに自由化されている企業向けで経験を積み、2年後の家庭向けの販売開始に備えようというところもある。

   参入の「御三家」といえるのが、エネルギー業界、通信業界、そして何でも顔を出す商社だ。

   エネルギー業界では、東京ガスが異業種と提携し、2016年から電気・ガス・通信・ケーブルテレビ(CATV)のセット割引を検討。JX日鉱日石エネルギーは発電規模を2030年までに現在の3倍にする方針で火力発電所の新増設を進めており、家庭への電力販売の拠点として「ENEOS」のガソリンスタンド(全国約1万1000カ所)を活用することも検討している。

大手商社では丸紅が意欲的

   通信大手のソフトバンクは太陽光など再生可能エネルギー発電に参入し、まず工場やマンションなど大口向けの電力販売に乗り出している。家庭向けでは自社の携帯電話の集金システムをベースに、携帯と電気のセット割引などを検討。KDDI(au)は子会社のCATV大手「ジュピターテレコム」を使ってCATVやインターネット回線と電力のセット販売を関東や関西の大口マンション向けに始めており、2016年には一般家庭向けに同様のサービスを投入する考えだ。携帯電話の顧客囲い込みにしのぎを削る通信業者の動きに、他業界も目が離せない。

   大手商社では丸紅が意欲的で、ガス火力発電と、石炭火力を各2基新設する計画だ。

   このほか、メーカーでもトヨタ自動車、日産自動車、パナソニック、日本製紙などが本体や関連会社で新電力に登録している。自社の事業所や販売店などに電気を売っていているのが中心だが、日本製紙は火力発電所を2~3カ所新設して2015年から電力小売りを始める予定。また、パナソニックは住宅の太陽光発電を買い集めて販売するという。

大手電力では身内の「たたき合い」始まる

   迎え撃つ大手電力では、身内の「たたき合い」の雲行きだ。東京電力は5月をメドに子会社を新電力に衣替えして関東以外での販売を始める方針で、大手企業の全国の事業所に一括して電気を供給する契約を虎視眈々、狙っているといい、10年後に域外で1700億円の売り上げをめざす。東電のなりふり構わぬ動きに、他の大手も危機感を募らせており、中部電力が既に13年、三菱商事系の新電力を買収し、首都圏に殴り込めば、関西電力は子会社を新電力として届け出て首都圏での電力販売に活用する構えで、顧客争奪戦がどこまで激しくなるか、注目を集めている。

   ただ、こうした制度改革がどこまで電気料金の引き下げにつながるかは未知数だ。原子力発電の停止で割高な火力発電が増えており、原発の再稼働が進まなければ、競争が起きても料金の高値基調は大きく変わらない可能性がある。また、新規参入事業者が効率のいい大規模マンションなど大口中心に事業を進めれば、一般家庭向け料金が高止まりする恐れもある。

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