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広がる「3Dプリンター」の活用 思い出フィギュア、お菓子、人工骨…

   「ワイアード」US版編集長のクリス・アンダーソン氏によって定義され日本でも注目を浴びた、3Dプリンターによる「メイカーズ革命」がいよいよ身近なものになってきた。

   10万円を切る低価格の家庭用装置が登場したほか、さまざまなサービスの展開が始まり、医療分野での活用も検討されている。

入学式の記念にフィギュア作成

「青山3Dサロン」ウェブサイト
「青山3Dサロン」ウェブサイト

   IDC Japanが2014年1月9日に発表した調査によると、13年の3Dプリンター世界出荷台数は前年の2倍を超える6万8000台だったと推測し、17年には出荷台数が31万5千台、売上額は27億ドル近くに達すると見込んでいる。それにともない関連サービスや消耗品市場も急成長するという。

   元は業務用に作られた100万円以上の3Dプリンターが多かったが、最近では価格を抑えた家庭用モデルの投入が相次いでいる。たとえば3月18日に発売されたXYZプリンティングジャパンの「ダヴィンチ 1.0 3Dプリンタ」は6万9800円で、手の届く価格を実現し「誰もがものづくりができる」時代に近づいたと言えそうだ。

   また、3Dプリンター関連のサービスを提供する企業も現れ、自分で端末を購入しなくても活用できる環境も整ってきた。そのひとつが青山3Dサロン(東京・港区)だ。「思い出を形に残す」というコンセプトで、本人そっくりのフィギュアの制作を手掛ける。4月7日放送のTBS系「あさチャン!」の取材に担当者は「記念に作られる方が多いですね。七五三ですとか結婚式、入学式」と答えていた。

   制作過程はまず事前に決めたポーズで約10分間静止した状態で、専門スタッフが全身の3Dデータを撮影する。次にスキャンしたデータを編集して髪の毛や服装などの細部を仕上げ、3Dプリンターでフィギュアとして出力して着色する。青山3Dサロンのサイトによると、制作に約2か月かかる。価格は5万1840円から。

   番組では孫娘(4)のフィギュア制作を依頼した男性(67)を取り上げた。普段は離れて暮らし、「ちょっと見ないとどんどん大きくなっていく」ので記録のため作ることにしたという。服装の色合いや模様までリアルに再現しており、完成したフィギュアを手にして「100%(の出来)です。よかったです」と嬉しそうに語っていた。

0.1ミリ単位で作れる人工骨

   フィギュア以外にも使い道は広がり、お菓子作りに利用できる「シェフジェット」が2014年中に発売予定だ。米3D Systemsが開発しているもので、砂糖やチョコレートを原料に菓子を出力する。業務用だけでなく家庭用としても販売されるという。

   医療分野でも研究が進んでいる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などのチームは4月7日、3Dプリンターで成形するカスタムメイド人工骨を開発したと発表した。医薬品医療機器総合機構(PMDA)に薬事承認を申請済みで、2015年に実用化の予定としている。

   これまで骨の欠損を治療するには自分の骨の一部を摘出するなどの方法があったが、手術時間が長く合併症が多くなるといった問題があった。カスタムメイド人工骨は一人一人に合わせた骨内部構造の設計や、0.1ミリ単位の形状再現が可能で、自骨への癒合も早いのが特徴だ。時間の経過とともに白骨に置き換わる。

   ツイッターでも期待が高まり、

「実用化されて、娘の治療に使えるようになるといいのですが」「歯医者さんに3Dプリンタが置かれたりするようになるのかな~」

などの書き込みがされている。