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賢いドライバーは「安全運転センサー」が判断、自動車保険料が安くなる

   自動車のIT化の進展で新たなサービスが誕生しそうだ。英米で損害保険会社が契約者の自動車に専用センサーを搭載して急加速・急ブレーキの回数などを測定し、ドライバーの運転特性を独自に判断、自動車保険料の設定に利用するサービスが誕生した。

   保険料が高くなりがちな若者でも、安全運転をすれば自動車保険料が下がるため、実際に交通事故が減ったほか、維持費の低下で若者のクルマ離れを食い止めるなど、予想外の効果が生まれているという。

英米で「安全運転促進保険」

   このサービスは「安全運転促進保険」と呼ばれ、損害保険会社が自社製の測定機器を契約者の車に搭載し、実際の走行距離や急ブレーキなどの走行データを収集し、運転特性を評価する。ITを駆使したこの保険は英国と米国の民間損保が実際に発売しているが、「事故の減少だけでなく、自動車保有のコスト低減で若者の自動車離れの抑止にも貢献している」(関係者)というから驚きだ。

   関係者によると、このタイプの保険は欧州全土や米国を中心に加入者が増加し、2020年頃には自動車保険契約件数の約3割を占めると予想されている。ITを駆使したこの保険は一例に過ぎないが、自動車とビッグデータを組み合わせたニュービジネスの誕生に危機感を抱いているのは、日本の国土交通省だ。

将来ビジョンをまとめ官民でイノベーション

   自動車の通信技術は1990年代にGPS式カーナビが誕生し、2000年以降は個々の自動車の位置・速度情報を集約してリアルタイムの渋滞情報などをドライバーにカーナビを通じて知らせる「テレマティクスサービス」が普及した。東日本大震災では、自動車メーカー各社のテレマティクスサービスで収集したクルマの位置・速度情報を集積し、被災地付近の道路交通マップを公開し、被災地の支援活動に役立てる取り組みも行われた。

   日本はハイブリッドカーや電気自動車だけでなく、車外通信技術を用いたビッグデータ活用の分野でも、世界をリードしてきた。「先進的な技術で国際競争力を有する自動車関連産業は、日本を象徴するリーディング産業の一つ。ITの一層の活用でイノベーションを進めることは、日本経済や社会全体に大きな波及効果をもたらす」と国交省は見ている。

   しかし、新たなサービスの創出や技術革新には課題もある。「取得した情報の取り扱いについて、個人情報保護制度との関係で、どの範囲の情報を活用するのが適当なのか、明確になっていない」「同じ業界でも、メーカーによって個別のシステムが開発・運用されており、情報の仕様などが共通化、統一化していない」(国交省関係者)という。

   このため国交省は「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン」をまとめ、自動運転技術の開発や自動車から得られるビッグデータの活用で、日本発のイノベーションを官民で目指すことになった。開発の目標は、東京オリンピックが開かれる2020年という。果たして、自動車とビッグデータを組み合わせ、どんな技術革新が生まれるのか、今から楽しみだ。