2024年 4月 26日 (金)

集団的自衛権容認を閣議決定、世論は賛成?反対? メディアによって大差、官房長官会見でも攻防

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   政府は2014年7月1日夕方臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を閣議決定した。直後に安倍晋三首相は首相官邸で会見し、閣議決定の正当性を強調した。だが、官邸のすぐ外では大規模なデモが繰り広げられ、国論は二分されたままで閣議決定に踏み切った形だ。

   実は「国論」を調べるための世論調査の結果も二分されており、ここ数日、官邸の会見場では世論調査のあり方をめぐる攻防が繰り広げられていた。

朝日調査では「賛成28%、反対56%」、産経は「集団的自衛権 63%が容認」

記者会見に臨む安倍晋三首相。「邦人輸送中の米輸送艦の防護」と題したパネルを使いながら閣議決定の正当性を強調した
記者会見に臨む安倍晋三首相。「邦人輸送中の米輸送艦の防護」と題したパネルを使いながら閣議決定の正当性を強調した

   集団的自衛権をめぐる世論調査は、調査を行うメディアの「社論」によって結果が大きく異なっているようだ。例えば行使容認に批判的な朝日新聞が6月21日と22日に行った電話世論調査では、集団的自衛権について

「集団的自衛権とは、アメリカなど日本と密接な関係にある国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして一緒に戦う権利のことです。これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきました。集団的自衛権を使えるようにすることに、賛成ですか。反対ですか」

と聞いている。その結果、賛成28%、反対56%だった。いわゆる解釈改憲をめぐっては、

「安倍首相は、国会の議論や国民の賛成を経て、憲法を改正するのではなく、内閣の判断で、政府の憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を使えるようにしようとしています。こうした安倍首相の進め方は適切だと思いますか。適切ではないと思いますか」

と聞いた。その結果「適切だ」という回答が17%で、「適切ではない」が67%だった。

   こう見ると、世論は圧倒的に「容認反対」に見える。たが、行使容認に積極的な産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が6月28日と29日に行った世論調査では、対照的な結果が出ている。

   この世論調査では、

「同盟国の米国など日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして一緒に反撃する『集団的自衛権』について」

という問いに対して4つの選択肢から選ぶ方式。選択肢と回答は以下のとおりだった。

「全面的に使えるようにすべきだ」(11.1%)
「必要最小限度で使えるようにすべきだ」(52.6%)
「使えるようにすべきではない」(33.3%)
「他」(3.0%)

   解釈改憲については、

「前問で『使えるようにすべきだ』と回答した人に質問する。集団的自衛権を使えるようにする方法は」

という問いに続いて、やはり4つの選択肢を提示した。その結果は以下のとおりだ。

「必ずしも憲法改正の必要はなく、憲法解釈を変更すればよい」(22.8%)
「憲法改正が望ましいが、当面、憲法解釈の変更で対応すればよい」(48.0%)
「憲法解釈の変更は認められず、必ず憲法の改正が必要だ」(25.4%)
「他」(3.8%)

   「必要最小限度」という選択肢の有無で、調査によって賛否の割合が大きく違って見える仕組みになっているとみられる。

産経「こうして国民の理解が進んでいることについてどう考えるか」

官邸前では行使容認に反対するデモが続いた。共産党の吉良佳子参院議員(左)、志位和夫委員長(右)も安倍政権を批判する演説をした
官邸前では行使容認に反対するデモが続いた。共産党の吉良佳子参院議員(左)、志位和夫委員長(右)も安倍政権を批判する演説をした

   産経新聞は自社の調査結果について、7月1日朝刊の1面で「全面」と「必要最小限」を合計した数字にもとづき「集団的自衛権 63%が容認」の見出しを掲げた。6月30日午前の官房長官会見では、調査について産経新聞の記者が

「反対の論調が目立つ中で、こうして国民の理解が進んでいることについてどう考えるか」

と政府を後押しする質問をし、菅義偉官房長官が

「確かに反対の論調の中で、こうした国民の皆さんの世論調査があるということは大変ありがたい」

と応じる一幕もあった。

   7月1日午前の会見でも、同様のやりとりが繰り返された。やはり産経新聞の記者が

「メディアによって賛否がかなりきれいに分かれた。このことについてどう考えているか。中には過激な報道も散見された。こうした報道にはどう考えているか」

   他社を間接的に批判しながら質問。これに対して、菅官房長官は

「質問の仕方によって国民の皆さんの答えが変わってくると思っている。少なくとも政府が今、基本的な考え方の中で目指している限定的な集団的自衛権の行使、そうしたものについて『必要だ』ということを入れると、6割ぐらいの皆さんにご理解いただけていると思う」

と分析した。

記者からも「世論調査が恣意的に使われているのではないかという懸念」

   こう見ていくと、メディア各社は世論調査を社論を補強するための道具に使っているとの指摘も出そうだ。実際、6月30日の会見では、テレビ朝日の記者が

「端的に言えば、集団的自衛権に反対したいメディアは賛成か反対かで(選択肢を)分けて、『反対の方が多い』。賛成したいメディアは、その(選択肢の)間に『限定』と入れて『賛成の方が多い』。世論調査が恣意的に使われているのではないかという懸念もある」

と質問している。菅官房長官は、

「政府としてコメントすることは控えたいと思う」

と苦笑いしていた。

   7月1日夕方の会見では、安倍首相は

「米国が(日本人を)救助、輸送しているとき、日本近海において、攻撃を受けるかもしれない。我が国自身への攻撃ではない。しかしそれでも、日本人の命を守るため自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにするのが今回の閣議決定」
「万全の備えをすることこそが、日本に戦争をしかけようとする企みをくじく、大きな力を持っている。これが抑止力」

   などと、5月15日に使用したパネルを再び持ち出して閣議決定の正当性を強調。だが、自民党の村上誠一郎元行政改革担当相は、同日朝に行われた総務会で閣議決定に反対意見を述べるなど、足元ですら完全にはまとまっていない状況だ。同日19時時点でも官邸前では大規模なデモが続いており、反対意見が目立つ形になっている。

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