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ネスレ日本が業界団体脱退する理由 インスタントの需要縮小が背景にはある

   日本でインスタントコーヒーを広めた立役者、ネスレ日本が、「独自」の戦いに挑む。ネスレは独自開発した新製法の表記を巡り業界団体と対立し、脱退を表明。専用のコーヒーマシンを武器に、新製法を使った製品の普及を図る。

   ネスレは1960年に「ネスカフェ」を発売して以降、国内でインスタントコーヒー文化を育ててきた。コーヒー豆の抽出液を乾燥し、お湯に溶かして飲むインスタントは、家庭でも手軽に飲めるコーヒーとしてすっかり定着した。

「インスタント」の表記やめ、「レギュラーソリュブル」に変更

インスタントコーヒー、家庭で飲まなくなった?(画像はイメージ)
インスタントコーヒー、家庭で飲まなくなった?(画像はイメージ)

   ところが2010年、「今までにない画期的な製品」(ネスレ)として「ネスカフェ 香味焙煎」を発売してから、戦略を転換する。コーヒー抽出液と、細かく粉砕した焙煎コーヒー豆を混ぜ合わせて乾燥させる新製法を採用。従来にはない「いれたての味と香り」を実現した。

   2013年秋には、 主力の「ゴールドブレンド」など全製品に新製法を採用。「インスタント」の表記をやめ、「レギュラーソリュブル」(ソリュブルは「溶ける」という意味)に変更した。

   ネスレは従来の「レギュラー」にも「インスタント」にも属さない画期的な技術だとして「レギュラーソリュブル」という新しいジャンルを設けるよう、全日本コーヒー公正取引協議会に提案してきた。ところが同協議会は名称の使用を認めず、広告表現としての使用も不当と結論づけた。「レギュラー」の文言を入れると、通常のレギュラーコーヒーと間違えてしまう恐れがあるためだ。

   この決定にネスレは強く反発。同協議会に加え、全日本コーヒー協会、日本インスタントコーヒー協会、日本珈琲輸入協会の計4団体を退会する手続きを進めている。

オフィスや喫茶店など「家庭外」を狙う

   ネスレが目指すのは、専用のコーヒーマシンを使ったレギュラーソリュブル需要の開拓だ。お湯を注ぐだけでも飲めるが、専用マシンを使った方がよりおいしく飲めるとアピールする。

   大きな柱が、家庭外での拡販だ。コーヒー消費の4割が、オフィスや喫茶店など「家庭外」だが、ネスレはこの分野が弱い。マシンをオフィスに無償で貸し出し、定期的に届けるコーヒーの粉で収益を上げる「ネスカフェ アンバサダー」が大きな柱だ。12年にスタートし、現在、14万件の顧客がいるが、2020年に50万件に増やす。

   スーパーなどに設置する簡易カフェ「カフェ・イン・ショップ」も1700カ所から4000カ所に、既存のレストランなどにマシンを設置してもらう「カフェ ネスカフェ サテライト」も200店から2000店に増やす。

   家庭内でも2013年現在、3%程度のマシンの普及率を、2020年に15%に増やし、ドリップ式コーヒーメーカーを追い抜きたい考えだ。

低価格のレギュラーコーヒーが増える

   背景にあるのが、インスタントの需要縮小だ。01年のインスタントの国内生産量は9・6万トンだったが、13年には9・2万トンに減った。一方、レギュラー(缶コーヒーなども含む)は、31・7万トンから35・3万トンに増えている。マクドナルドや大手コンビニエンスストアがこぞって低価格のレギュラーコーヒーを展開し、手軽にレギュラーを楽しめる時代になった。「レギュラーソリュブル」で、他社のインスタントや、コンビニコーヒーなどの顧客を奪えるか、注目される。