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三井住友信託と横浜銀が業務提携を検討 他の地銀も参加、新たな再編の核になる?

   三井住友信託銀行と横浜銀行が、資産運用分野での業務提携を検討する。地方銀行にも参加を呼びかけているという。信託銀行と地方銀行の最大手同士の提携に、銀行業界では「新たな銀行連合の核になるのでは」と注目が高まっている。

   「業務提携の検討について」。両行が8月27日に公表したニュースリリースはこう題され、「三井住友トラスト・グループの資産運用等のノウハウを活用し、横浜銀行のお客さまの資産形成をサポートしていく」方針が記されていた。

「今回の提携が実現すれば大ヒットだ」

業界再編の機運が高まっている?(画像は横浜銀行のホームページ)
業界再編の機運が高まっている?(画像は横浜銀行のホームページ)

   具体的には、両行が共同出資の資産運用会社を設立。国内最大規模の資産運用・管理残高を誇る三井住友トラスト・グループのノウハウを生かして横浜銀の顧客層に合った専用の投資信託を開発したり、三井住友信託銀が横浜銀に行員研修などを通じて投信の販売を支援したりすることを想定している。

   三井住友信託銀の行員は「今回の提携が実現すれば大ヒットだ」と興奮ぎみに語る。三井住友信託銀の店舗は大都市に限られ、顧客は超がつく富裕層が中心。一方、横浜銀は神奈川や東京に支店網を張り巡らせ、分厚い顧客層を抱える。横浜銀の店舗を活用すれば、「うちがアプローチできていない顧客に共同開発投信を販売できる」(三井住友信託銀行員)ためだ。

   横浜銀の期待も大きい。長引く低金利の中、本業の貸出金の利回りは縮小傾向が続く。三井住友信託銀からノウハウを得て、販売後も購入者から信託報酬が得られる投信の販売を伸ばし、新たな収益源としたい考えだ。

「他の地銀を巻き込むため」公表を急ぐ

   ただ、共同出資会社の出資比率など、提携の具体的な枠組みを詰めるのはこれから。中身がほとんど決まっていないにもかかわらず、公表を急いだ理由について、両行の関係者は「他の地銀を巻き込むためだ」と明かす。両行が詳細を決めた後では、他の地銀は参加しづらいが、早い段階から加われば枠組み作りから関われる。白紙の状態で計画をぶち上げ、他の地銀が参加しやすい環境を作った、というわけだ。

   実際、提携検討の公表後、全国の地銀から問い合わせが相次いでいるといい、提携先は拡大する可能性がある。大都市にしか店舗を持たない三井住友銀は、地銀から見れば競合が少なく、提携相手として安心感があるようだ。

横浜銀が主導権を握ろうとしているのではないか

   今回の提携検討について、銀行業界では「横浜銀がいよいよ地銀連合の結成に打って出た」と見る向きもある。2014年1月、千葉、静岡、福岡など全国の地銀大手9行が取引先やM&A(企業の合併・買収)の相手を紹介しあうため業務提携したが、横浜銀はこの「9行連合」に加わらなかった。地方の人口減少や経済の疲弊を背景に、地銀の再編や連携の必要性が指摘される中、動こうとしない「地銀の雄」の出方が注目されていた。今回の提携をきっかけに、横浜銀が新たな地銀連合を構築し、主導権を握ろうとしているのではないか――との見方がささやかれている。

   両行の提携が全国に広がり、地銀の新たなビジネスモデルとなるのか。そして、さらに踏み込んだ地銀同士の提携に発展するのか。新たなタッグの行方を、銀行業界は注視している。