2024年 4月 19日 (金)

都市ガス「小売り自由化」2017年にも 一般家庭でも供給会社を選べるようになる

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   電力に続き、都市ガスも小売りが自由化される。政府は2017年に実施すべく、2015年の通常国会に関連法案を提出する方針を打ち出した。2016年の電力小売り全面自由化に追随させ、電気とガスの業界間の相互参入を促そうという狙いがある。

   各社のコスト削減努力によりガス代と電気代の抑制が期待できるということだが、ガスは電力に比べて中小事業者が多く、保安問題のクリアにも課題が残る。

競争促進で料金を抑える狙い

   2011年の東日本大震災以降、福島第1原発事故に伴う原発長期停止で火力燃料コストが増加し、家庭用電気料金は平均2割上昇。家庭用ガス料金も、主成分の液化天然ガス(LNG)価格の上昇や円安で大都市圏では約2割上がっている。企業や家計のエネルギーコスト増は、日本経済の重荷で、ガス小売り自由化による競争促進で、料金を抑えるというのが最大の狙いだ。

   ガス事業の自由化は1995年に年間使用量200万立方メートル以上の大工場などで始まり、1999年に100万立方メートル以上(大型商業施設など)、2004年に50万立方メートル以上(中規模工場など)、2007年には10万立方メートル以上(小規模工場など)と、順次自由化され、利用者とガス事業者の交渉で料金を決められている。残る10万立方メートル未満の小口契約(一般家庭や商店など)は今もガス会社の「地域独占」が認められていて、消費者は自由にガス会社を選べない。今回見直すのは、この最後に残った小口契約で、都市ガス市場の約4割を占める。

   LNGは国内消費の97%を輸入(2012年度で8687万トン)に頼るが、実は約7割は火力発電の燃料で、都市ガス分は約3割。将来的に、原発再稼働や火力発電の石炭シフトなどで電力会社のLNGが余り、これを都市ガス用に振り向けることが可能というのが、政府の見立てだ。さらに、LNG基地を保有しているJXホールディングスなど石油元売り大手も参入して、業界の垣根を越えた都市ガス小売りの競争が加速すると期待しているのだ。

電力とは全く異なる状況

   もちろん、電力と同様に、寡占企業に新規事業者が競争を挑める公正な条件作りが欠かせない。そこで焦点になるのが、現在はガス導管の整備・管理から小売りまでを一貫して手掛ける都市ガス事業者から、ガス導管部門を分離するかだ。新規参入者は使用料を払ってガス導管を利用し、ユーザーにガスを届けることになるが、電力の送電部門切り離し論と同様、新規参入者が大手事業者と対等に競争できるようにするのが、導管分離の狙いだ。

   ただ、送電網は全国に張り巡らされ、基本的に全てつながっていて、まとめて分離するのが比較的容易なのに対し、都市ガスは各事業者が自社の営業エリアにそれぞれガス管を敷設し、相互がつながっていないケースも多い。しかも、都市ガスの販売シェアの7割を占める東京、大阪、東邦の大手3社を除くと、事業者の規模が小さく、全国約200事業者のうち8割が従業員100人以下の中小企業。10社寡占の電力とは全く異なる状況にある。このため、政府は導管部門の分離は資本力がある大手3社に限定する方向で検討することになりそうだ。

保安水準の維持・向上も課題

   これに対して大手3社などは「ガス需要開拓に合わせて導管網やタンクを整備するビジネスモデルであり、導管部門も含めて1社でやる方が経済合理性に適う」(大手都市ガス)と主張している。政府は2019~2021年をめどに分離したい考えだが、会計を別にする「会計分離」、別会社にする「法的分離」、資本関係を完全に分離する「所有権分離」などの形態を含め、法案作成の過程で議論は最後までもつれそうだ。

   もう一つの大問題が安全確保問題だ。住宅や工場でのガス漏れは、重大事故につながる恐れがあり、現在は各地域の都市ガス事業者が保安責任を負うが、自由化して導管事業者を分離した場合、誰に保安責任を負わせるかをめぐり、意見の対立がある。小売り事業者が、導管から家庭のガス機器まで一体的に保安業務を実施する方が保安水準の維持・向上が図れるとの考えの一方、新規参入者は必ずしも保安の知識や経験が必ずしも十分でないないため、導管事業者に保安責任を課すべきだとの声も消費者サイドなどに強い。

   このほか、導管を分離した場合、巨額のパイプライン建設などインフラを確実に整える仕組みをいかに作るか、国の支援のあり方も含めて議論はこれからの課題だ。

   様々な問題をはらみながら自由化に向けて走り出した都市ガス改革。消費者の利益になるのか、今後の議論に対して厳しい監視の目が必要だ。

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