2024年 4月 24日 (水)

アサヒビールが老舗料亭「なだ万」買収  背景には止まらない国内ビール市場の縮小

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   アサヒビールが老舗料亭のなだ万(東京都新宿区)の買収を決めた。和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、改めて世界的に注目されるようになる中、海外でも出店して高いブランド力をもつ「なだ万」を取り込むことで、海外でのアサヒブランドの浸透と事業強化を図る狙いがあるようだ。

   アサヒビールは2014年12月にもなだ万創業家から発行済み株式の51.1%を取得する予定。買収額は明らかにしていない。これまでも居酒屋チェーンやファミリーレストランに出資し、外食企業との関係強化を進めてきたが、買収に至ったのは今回が初だという。

アジアで7店の高級日本料理店をオープン

「ビール」がダメなら「料亭」で(画像はなだ万のホームページより)
「ビール」がダメなら「料亭」で(画像はなだ万のホームページより)

   なだ万は1830年に初代の灘屋萬助氏が大阪で創業した料理店をルーツとする。1986年の東京サミットの公式晩餐会に、なだ万の「山茶花荘」(東京都千代田区)が選ばれるなど各国の国賓や政財界人にも多くのファンをもつ。国内で27店を展開しているほか、1981年の香港を皮切りにアジアで7店の高級日本料理店をオープン。料理店以外にも百貨店などで惣菜や弁当を販売する「なだ万厨房」も国内で37店を展開している。

   なだ万買収というニュースに対し、ネット上では「なだ万なんて行ったこともないし、これからも行けないだろうな」「ミシュランにも載る懐石の老舗」などというコメントが並んだように、世間では「庶民に縁遠い高級料亭」というイメージが強い。

海外のなだ万でアサヒブランドを浸透させたい

   アサヒビールは11月14日の買収発表で「老舗料亭の経営ノウハウを取得し、海外進出を積極化している外食企業にノウハウの提供が可能となる」「ユネスコの無形文化遺産に登録された『和食』文化をリードしてきた『なだ万』ブランドを、グループ力を活用し、日本国内および世界に広めていくことも視野に入れている」との考えを示した。

   分かるようで分かりにくい買収理由だが、要は「海外に出る外食企業をサポートする代わりに店にアサヒ商品を置いてもらい、さらには和食ブームにわく海外のなだ万でスーパードライを出すことでアサヒブランドを浸透させたいとの狙いがある」(ビール大手)ということのようだ。

「どうして買収したのか理解できない」との声も

   このようなアサヒビールの海外戦略の背景には、歯止めがかからない国内ビール市場の縮小がある。酒税法の見直しが検討され、ビール需要のさらなる落ち込みも懸念されるなか、国内トップブランドのスーパードライを持つアサヒビールとて安閑としてはいられない。

   海外展開を加速させるアサヒビールは「スーパードライを2020年にグローバルブランドトップ10に入る商品にする」という目標を掲げており、経済発展著しい中国や東南アジアで、信頼される「日本ブランド」を武器に需要のさらなる掘り起こしに努めている。

   それだけに富裕層が増加している中国やシンガポールなどに出店しているなだ万は、アサヒビールのブランドイメージを高めるのに打って付けの存在だったというわけだ。ただ、業界には「期待するほどのシナジー効果が得られるのか」と今回の買収に懐疑的な見方も少なくなく、そもそも「どうして買収したのか理解できない」との声も出ている。

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