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冬は雪化粧の立山連峰が売り JR西日本が報道陣向け北陸新幹線試乗会

   北陸新幹線の開業を1か月後に控え、JR西日本は2015年2月5日、報道陣向けの試乗会を開いた。

   首都圏と北陸地方を結ぶ交通事情が大きく変わるとあって、金沢と富山合わせて約300人の報道陣がつめかけた。

新幹線車両としては初めて全席にコンセント

北陸新幹線を走る「E7系・W7系」。12両編成で、一度に934人を運べる
北陸新幹線を走る「E7系・W7系」。12両編成で、一度に934人を運べる

   北陸新幹線では、主に「E7系・W7系」と呼ばれる新型車両が走る。長野新幹線「あさま」で活躍してきたE2系に比べて前後の座席の間隔(シートピッチ)が6センチ広がり、新幹線車両としては初めて全席にコンセントがついた。グリーン車よりも高級な「グランクラス」も備えている。

   報道陣向けの列車は、15年3月14日に開業する金沢-長野間(228キロ)を往復。W7系が使用され、各駅停車タイプの「はくたか」に近いダイヤで走った。9時56分に金沢駅を出発し、9分後には最高速度の260キロに達したが、ほとんど揺れは感じられなかった。金沢を出てから30分程度海沿いを走り、車窓は進行方向左側に青い日本海、右側には雪化粧をした立山連峰を楽しめる。JR西日本の田中徳和(のりかず)車両部担当部長は、

「雪山ということで、我々関西の人間からすると、『おっ!』と感じるところがある。そういった点は、かなり訴求できるのでは」

と話し、立山連峰を一番の「お勧めポイント」に挙げていた。

4割がトンネル、iPhone 5sは圏外になる

車窓からの立山連峰は絶景だ
車窓からの立山連峰は絶景だ

   新たに開業する金沢-長野のうち、約4割がトンネルだ。黒部宇奈月温泉駅を越えたあたりからトンネルが増え始め、糸魚川駅から先は「ほぼトンネル」だと言っても過言ではない。上越妙高駅周辺では一瞬だけ一面の雪景色を楽しめたが、直後に日本で4番目に長い飯山トンネル(22.3キロ)に突入。再び外は真っ暗になった。乗客が気付くのは難しいが、飯山トンネルは30パーミル(水平距離1キロあたり標高が30メートル上がる)という新幹線有数の「急勾配地帯」でもある。

   列車は11時30分に長野駅に到着し、ゆるキャラやキャラバン隊の出迎えを受けた。

   前出のように車両のシートピッチが広い分、テーブルを出して作業したりする際に余裕が出たように感じられた。ただ、トンネルの中では携帯電話(記者はソフトバンクのiPhone 5sを使用)が圏外になるので、PCで作業していてもメールを送ることができない。トンネルが少ない区間や停車駅での短い時間を狙って通信するなど、一工夫が必要そうだ。

一般向け試乗会の倍率は77.3倍!

「E7系・W7系」の普通車。全席にコンセントがつき、従来よりもシートピッチが6センチ広がった
「E7系・W7系」の普通車。全席にコンセントがつき、従来よりもシートピッチが6センチ広がった

   北陸新幹線への関心は高く、2月7日と8日に行われる一般向けの試乗会では、2800人の募集に対して21万6319人(8万5407件)が応募。倍率は約77.3倍に達している。

   北陸新幹線は、新たに開業する金沢-長野間と、すでに長野新幹線として営業している長野-東京間と合わせると、停車駅が少ない「かがやき」の場合で、金沢-長野を最速1時間5分、金沢-東京間を最速2時間28分で結ぶことになる。

   これまでは、東京から金沢まで陸路で行く場合は越後湯沢で上越新幹線から「はくたか」号に乗り換えて合計3時間47分かかっていた。北陸新幹線の開業で、これが1時間20分程度短縮されることになる。

   E7系・W7系の1編成は12両で構成され、一度に934人を運ぶことができる。「かがやき」「はくたか」合わせて東京-金沢を1日に24往復する予定で、首都圏と北陸の間に新たな「動脈」が誕生する。東京-金沢の2010年時点でのシェアは航空機が64%を占めるが、新幹線が逆転するのは確実だ。

   日本航空(JAL)は金沢に近い小松空港、全日空(ANA)は小松空港と富山空港に乗り入れている。北陸新幹線の開業で大幅に乗客が減少するとみられるが、現時点では減便せずに飛行機を小さいサイズのものに切り替えて対応する。羽田空港で乗り継ぐ乗客の需要を見込んでいることに加え、減便して利便性が悪くなった結果、客離れが加速することを避けるためだ。