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ルネサス女性社員、新幹線通勤の過酷さを訴え 早期退職の応募断り、高崎市への転勤命令

   半導体大手「ルネサスエレクトロニクス」の50代女性正社員2人が転勤命令で新幹線通勤などを強いられていると「しんぶん赤旗」が報じ、ネットで話題になっている。

   赤旗によると、女性社員2人は東京都小平市の武蔵事業所に勤めていたが、2014年10月1日付で群馬県高崎市の高崎事業所への転勤を命じられた。

「単身赴任すれば、子供3人が家に取り残される」

   うち1人の女性(53)は、10月上旬から新幹線を利用し、都内から片道2時間40分ほどをかけて高崎に通い始めた。最初はバス代の支給はなく、自宅から最寄りの駅まで徒歩30分以上かけて歩き、在来線で大宮駅まで出て新幹線に乗る毎日が続いた。12月初めにバス代が出るようになったが、遅刻しないよう早めの新幹線に乗るため、結局歩くようになった。

   大宮―高崎間の新幹線は、定期代が月7万円ほどかかり、会社から通勤手当は出るものの、女性は8000円ほど自己負担しなければならないという。

   女性は、その後両ひざを痛めて、15年1月末から自宅療養になった。長距離通勤は過酷だといい、早く元の武蔵事業所に戻してほしいと訴えている。もう1人の女性は、高速を使ってマイカー通勤をしており、ガソリン代は出るものの、高速代が負担になっているという。

   赤旗によると、2人が長距離通勤をしているのには、子育て上の理由があった。

   新幹線通勤の女性は、夫が先に高崎事業所に転勤して単身赴任中で、自分も単身赴任すれば、家に中・高・大学の子供3人が取り残されてしまうという。ルネサスからは、早期退職制度に応募するように勧められたが、教育費がかかるうえ、転勤の仕打ちに納得がいかないため、退職するわけにはいかないとしている。

「育児・介護休業法に配慮して進めています」

   とはいえ、ネット上では、ルネサスの女性社員2人は群馬県に引っ越しをすればいいのではないか、との疑問も出て、論議になっている。

   育児・介護休業法の第26条では、社員を転勤させるに当たって子育てに配慮すべきだと規定している。赤旗によると、女性社員2人は、労組の電機・情報ユニオンに加入し、その支援を受けて、厚労省東京労働局の雇用均等室に違法性があると申し立てをした。赤旗の記事では、雇用均等室はそれを受けて、ルネサスに2人の転勤命令を撤回するよう、4回にわたって助言・指導をしたとしている。

   これは本当かどうか取材すると、雇用均等室では、「個別案件については、申し立てがあったかも含め、お答えできません」とだけ答えた。ただ、一般論としては、場合によって助言・指導はするものの、26条は努力義務であって、こうしなければいけないという具体的内容はなく、罰則もないという。

   ルネサスの広報担当者は、助言・指導を受けたかについては、把握していないとしたが、「育児・介護休業法を考え、個別の事情に配慮しながら進めています」と取材に説明した。個人に関わる話はできないとしたうえで、「初めに異動ありきではなく、働く場がなくなるので転勤してもらうということです」という。今回は、会社立て直しの一環として設計機能を再編して高崎事業所に部門を移し、部門の全員に転勤を提示しており、「どうしても転勤できない人には、受け皿として早期退職優遇や再就職支援を行っています」と言っている。