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「青春18きっぷでは北陸に行けない」 新幹線開業の裏で鉄道ファンの悲嘆

   北陸新幹線の開業が半月後に迫った。東京から金沢や富山へのアクセスが便利となり、待ちわびている人は少なくないだろう。

   だが意外にも、これが一部鉄道ファンにとって残念な事態を引き起こすことになる。JRの普通列車が1日乗り放題となる「青春18きっぷ」に、大きな影響を与えるのだ。

在来線部分は第三セクター4社に移管

北陸本線と信越本線が4社に分割移管される (C)Yahoo!地図
北陸本線と信越本線が4社に分割移管される (C)Yahoo!地図

   青春18きっぷが有効なのは、「JR全線の普通列車(快速含む)の普通車自由席及びBRT、並びにJR西日本宮島フェリー」だ。BRTとは「バス高速輸送システム」で、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県と宮城県の気仙沼線と大船渡線の2路線で取り入れられている。

   今回問題になるのは、北陸新幹線開業でJRの在来線が第三セクターに移管される区間だ。具体的には、信越本線の長野―直江津間と、北陸本線の直江津―金沢間が該当する。この区間はしなの鉄道、えちごトキめき鉄道、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道の4社が引き継ぐ。JRではなくなるため、長野から日本海側を走る総距離およそ290キロの路線が18きっぷの対象から外れるのだ。長野から金沢まで4社の路線を利用した場合、おとな片道運賃は単純計算で4820円となる。

   鉄道ファンの悲しみは深い。「これは痛い」「朝から立ち直れない」「こうなるとは思ったけど」といった嘆きが、ツイッターに書き込まれた。

   過去にも同じ事例がある。東北新幹線は2002年に盛岡―八戸間、2010年に八戸―新青森が延伸したが、在来線部分はIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道の第三セクター2社に移管された。また2004年に九州新幹線の新八代―鹿児島中央間が先行開業すると、並行するJR鹿児島本線の八代―川内間は肥薩おれんじ鉄道の路線となった。いずれも、「18きっぷ」の対象ではない。

   一部例外的な取り扱いはある。JR東日本によると、青い森鉄道の青森―八戸間、IRいしかわ鉄道の金沢―津幡間、あいの風とやま鉄道の富山―高岡間は「普通列車(快速含む)で通過利用する場合に限り、『青春18きっぷ』のみでご利用になれます」という。

   北陸新幹線開業に伴う第三セクター路線への在来線移管により、富山県のJR氷見線(高岡―氷見)と城端線(高岡―城端)、石川県の七尾線(津幡―和倉温泉)は、他のJR路線と接続する駅がなくなる。このため、JRで岐阜方面とつながる富山駅や、福井方面とを結ぶ金沢駅を発着する第三セクターの普通列車などに、「例外的」に18きっぷ適用を認める。

北海道や長崎でも「乗り放題区間」減少か

   ただ、北陸地方で18きっぷが今後も使える路線は極めて限定されてしまう。しかも、利用範囲は将来さらに狭まっていくのは間違いなさそうだ。

   1970年制定の全国新幹線鉄道整備法で整備計画が定められた新幹線のうち、「北海道新幹線」の札幌―新青森間と、九州新幹線「長崎ルート」の武雄温泉―長崎間、北陸新幹線の金沢―敦賀間が今後開通していく。このうち北海道新幹線・新青森―新函館北斗間は2016年春に部分開業する予定だ。新幹線の整備が進み、並行する在来線が第三セクターに移管されれば、「JRでない路線」が増えていく。18きっぷ利用者にとっては、ますます頭の痛い事態になるだろう。

   「カネはないけど、時間はある」若者が18きっぷを手に、「乗り放題」のメリットを最大限得ようと知恵を絞って乗り継ぎ方法を編み出し、全国を回る。こんな鉄道の旅は消えゆく運命なのだろうか。